寝る子は育つ睡眠学【月刊Newsがわかる1月号】

どうして朝は来るの?   <この世界のしくみ>

 誰もが一度は抱いたことのあるような問いについて、哲学者が、子どもたちとともに考えていくという形で書かれた「子どもの哲学」シリーズの第2弾『この世界のしくみ 子どもの哲学2』(毎日新聞出版刊)。大人も子どももいっしょになって、ゆっくりと考えてみませんか。本書から一部をご紹介します。本書のもとになった「てつがくカフェ」は、毎日小学生新聞で毎週木曜日に連載中です。

止まっているはずの地面が…… ゴードさん

 夜、布団に入ると、自分でも気がつかないうちに眠り込んでしまう。そして、いつのまにか朝が来ていて、ふと目が覚める。こんなことが毎日繰り返し起こるのは、とても不思議だね。

 朝と夜が繰り返しやってくるのは、私たちの住んでいる星が、くるくる回っているからなんだって。私たちの住む地球という星は、太陽という熱く明るく大きな星の近くにある。地球の中で、太陽の方を向いている側の半分は明るく暖かく、反対側の半分は暗く冷たくなっている。この明るい側が昼で、暗い側が夜なんだ。そして、地球は自分の体をぐるりと一日一回転させている。すると、あなたの住んでいる場所が、太陽の方を向いたり、反対を向いたりするね。これが、毎日、昼と夜が繰り返しやってくる理由なんだって。止まっているはずの地面が、実は毎日、回っているなんて、びっくりしてしまうね。

どんなふうに不思議? ……ツチヤさん

 あなたのお便りには、ただ一言「夜寝ると、毎日、朝が来るのが不思議」とだけ書いてあった。実を言うと、これを読んで僕は、とても懐かしい気持ちになって、心をゆさぶられたんだ。哲学に出会って、ふつうの人が当たり前だと思っていることをずいぶん疑ったり考えたりしてきたけど、毎日朝が来ることを「不思議」に感じる感覚は、もうだいぶ前に失ってしまったなあ。でも、あなたのおかげで、これがとても不思議なことだというのを思い出せたよ。

 でも、どう不思議なんだろう? まず、毎日必ず朝が来るというのは不思議だ。晴れの日も雨の日もあるように、たまには朝が来ない日があってもいいのに、なぜだかそういう日は決してない。なんでそういう日はないのだろう? また、眠って意識がなくなっても、朝には必ず意識が戻ってくるのも不思議だ。まるで僕たちは、毎日夜になるといつもいったん死んで、朝になると必ず生き返ってくる生き物みたいだ。でも、僕が一番不思議なのは、目覚めた自分は必ず昨日と同じ自分だってことだ。目覚めたらお母さんだったり、庭の木だったり、ペットの犬だったりしたことは一度もない。なんでそういうことはないのだろう? 

毎日の朝が違うのも不思議……ムラセさん

 この問いはとても面白いね! 「毎日明るくなる」ことは、ゴードさんが書いてくれたように、太陽と地球の位置で説明できる。でも、「毎日朝が来る」ことの不思議さは、そこではなくて、「同じことが繰り返されている」ことにあるって、ツチヤさんは考えているようだ。

 でも、本当に同じことが繰り返されているのかな? 昨日の朝と今日の朝って、違う日だ。だから、細かく見ると「まったく同じ朝」ではないはずだ。気温や天気は違うし、家族みんなの表情や声の感じもまったく同じではないだろう。もしそうなら、毎日必ず同じ朝が来るというのは、本当は正しくない。実は、毎回違うのに、僕たちが、あえて同じだと考えているってことになるよね。

 同じことが繰り返されているのも不思議だけど、毎日の朝がぜんぜん違うものであることも不思議なことだ。同じことが繰り返されるということは厳密にはないのだとすると、あらゆる瞬間はすべてぜんぜん違うものであることになる。同じものなんて何一つ存在しなくて、刻一刻とすべてが移り変わっていくんだ! これはこれで、ちょっと怖い感じもする。そして、もしこれが本当なら、違うのにあえて同じだって思うのはなぜなのかも不思議だ。僕たちが無理矢理に「同じ」ってことにしているんだからね。なんでそんなことをするんだろう?

 結局、「同じ」や「違う」、「繰り返す」ことについての不思議が増えちゃったね。
「てつがくカフェ」は毎日小学生新聞で毎週木曜日に連載中

<5人の哲学者をご紹介>

河野哲也(こうの・てつや)

立教大学文学部教育学科教授。専門は哲学、倫理学、教育哲学。NPO法人「こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ」副代表理事。著書に『道徳を問いなおす』、『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』、共著に『子どもの哲学』ほか。

土屋陽介(つちや・ようすけ)

開智日本橋学園中学高等学校教諭、開智国際大学教育学部非常勤講師。専門は哲学教育、教育哲学現代哲学。NPO法人「こども哲学 おとな哲学アーダコーダ」理事。共著に『子どもの哲学』、『こころのナゾとき』シリーズほか。

村瀬智之(むらせ・ともゆき)

東京工業高等専門学校一般教育科准教授。専門は現代哲学・哲学教育。共著に『子どもの哲学』、『哲学トレーニング』(1・2巻)、監訳に『教えて!哲学者たち』(上・下巻)ほか。

神戸和佳子(ごうど・わかこ)

東洋大学京北中学高等学校非常勤講師、東京大学大学院教育学研究科博士課程在学。フリーランスで哲学講座、哲学相談を行う。共著に『子どもの哲学』ほか。

松川絵里(まつかわ・えり)

大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任研究員を経て、フリーランスで公民館、福祉施設、カフェ、本屋、学校などで哲学対話を企画・進行。「カフェフィロ」副代表。共著に『哲学カフェのつくりかた』ほか。

 

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