2025年 重大ニュース【月刊ニュースがわかる12月号】

ラッピング列車は、どのように作られているのですか?【疑問氷解】

Q:ラッピング列車は、どのように作られているのですか?(奈良市、小2)

先頭車両で6時間 複数人で慎重作業

  A キャラクターやイラストなどで彩られ、華やかな「ラッピング列車」。たしかに、どうやって作るのか気になりますね。2001年に初めてラッピング列車が登場、今は「ミッフィー号」と「SDGsトレイン」の2種類を運行している阪急電鉄広報部の小林達彦さんに教えてもらいました。

  阪急電鉄では、セロハンテープなどで有名な3M社の「コントロールタック」という製品名のシートを使っています。合成樹脂のポリ塩化ビニールでできていて、厚さ0.1ミリメートルほどのシートは「粘着層」「インクジェット印刷層」「表面保護ラミネート層」の3層構造になっています。メーカーに絵柄を印刷してもらう特注品で「阪急電車の車両の形、ドアや窓ガラス、車両番号の位置などに合わせたデザインにしています」と小林さんは話します。

  シートが薄いので、貼るにはコツがいるそうです。気泡やシワが入ってでこぼこにならないよう、「スクイージー」というヘラのようなものを使って貼っていきます。「完成図を見ながら複数人で絵柄を合わせていくので、作業員が声をかけ合って、ずれないように慎重に作業しています」

 作業の人数にもよりますが、「SDGsトレイン」の場合、中間の車両だと1両の片面にシートを貼るのにかかった時間は、約1時間半。一方、先頭車両は、前面と側面の角の部分をきれいに仕上げるため手順が多く、技術も要求されるので6時間ほどかかったそうです。

 役割が終わってシートをはがす時も大変です。ラッピングの面積や作業人数にもよりますが、1編成あたり短くても約3~4時間、長いと5~6時間ほどかかるそうです。「冬場は気温が低くなり、シートののりが硬くなっているので、ドライヤーなどで温めてのりを軟らかくしながら、ラッピングをはがしていかないといけないので、手間がかかるのです」

 電車が速く走ると、シートがはがれてしまうかもと心配する人がいるかもしれません。しかし、心配無用です。走っている時はもちろんのこと、洗車機で洗ってもはがれない丈夫なシートを使っているそうです。「気温や湿度、日差しの影響で色などが少し変化することはありますが、3~4年は鮮やかなままです」と話します。【毎日小学生新聞編集部】

(2022年9月19日毎日小学生新聞掲載)

最終運行を終えて回送電車となった万博ラッピング列車=大阪市此花区のJR桜島駅で2025年10月29日、峰本浩二撮影

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