世界の人たちと生きる これからの日本【月刊ニュースがわかる11月号】

人間に育てられた犬や猫は、動物の言葉はわからないの? 【疑問氷解】

Q:人間に育てられた犬や猫は、動物の言葉はわからないのですか?(福岡県北九州市、小5)

音の強弱で記憶、200語理解の犬も

 A ベストセラーとなった「ざんねんないきもの事典」などの監修で知られ、静岡県伊東市にある「ねこの博物館」館長でもある動物学者の今泉忠明さんに聞きました。

 人間に育てられた犬や猫は、自分のことを人間だと思っているところがあります。犬は人間の言葉を200語くらい理解していますが、単語としてわかっているわけではなく、音の強弱で覚えています。これはドイツやイギリスなどで犬の言葉への理解に対する実験がされていて、科学的に解明されています。

 猫はどうなのでしょう? 猫は黙っているため、犬のようにはデータはありません。しかし猫の脳には、考えたり言葉を理解したりするための大脳新皮質が犬と同じくらいあることから、犬と同様の知能をもち、人間の言葉を理解していると考えられています。

 動物の言葉の中には、親子だけに通じる「おいで」と、どの動物にも通じる「逃げろ」があります。外敵が来た時にはみんなで「逃げろ」となり、安全になったときにはそれぞれの親が自分の子どもだけを呼ぶという合理的な仕組みです。

 動物同士のコミュニケーションの様子は、ドッグランを訪れるとわかります。どの犬とも仲良くできない犬がいるのを見かけますよね。そういう犬は自分を特別(人間)と思っているので、他の犬を見ると「僕と違う」とか「変なやつ」と感じています。お互いに理解し合えなくてけんかをしてしまうわけです。

 猫も同じで、人に飼われている家猫と、野良猫の間では、基本的な言葉はわかっても、自分を人間と思って生活している家猫の言葉を、単純な動物社会で生きている野良猫は理解できません。お互いに警戒して、仲良くなれないのはそれが理由です。

 実は、犬と猫ではコミュニケーションの取り方がまったく違います。犬は群れ社会で、上下関係がはっきりしていて、ボスが権力をもちます。普通は飼い主がボスですが、ボスがだらしないと犬がボスになろうとして、アルファ症候群(権勢症候群)といって、飼い主にかみついたり、散歩に行く方向も飼い主の言うとおりにしなかったりします。

 それに対して、猫は気ままな性格です。野良猫たちは集会といって、地域のボスを中心に静かに互いの存在を確認し合います。座っているだけに見えますし、1時間くらいのことですが「あいつは新入りだな」など黙っているようでコミュニケーションはとれています。猫社会は犬に比べて平等で平和主義ですね。

 【毎日小学生新聞編集部】(毎日小学生新聞2019年12月20日掲載)

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