世界の人たちと生きる これからの日本【月刊ニュースがわかる11月号】

高専に行こう! 新居浜高専編

高等専門学校。タイトルにある「高専」の正式名称です。ロボコンなどでその名前を聞いたことがあるかもしれません。
高専は高等学校と同じく、中学校を卒業したひとが入学することができ、入学後は5年一貫教育(商船学科は5年6カ月)。一般科目と専門科目をバランスよく配置した教育課程により、エンジニアに必要な豊かな教養と体系的な専門知識を身につけることができます。近年はこの高専のカリキュラムが海を越え「KOSEN」として東南アジアを中心に注目されています。
「高専に行こう!」では、実際に全国各地の高専の魅力や特徴などをレポートします。今回は新居浜高専を紹介!

 新居浜工業高等専門学校は、昭和37年に国立高等専門学校(高専)の第一期校として設立されました。機械工学科、電気情報工学科、電子制御工学科、生物応用化学科、環境材料工学科の5学科があり、本科卒業後には、同じキャンパスでさらに2年間の高度な専門教育を受けられる専攻科も設置しています。学科によって差はあるものの、女子学生の割合は全体の約3割(令和7年度現在)と、高専の中でも比較的高いことが特徴の一つです。

 新居浜高専の教育理念は「知恵・行動力・信頼」であり、学びと体験を通じて未来を切り拓く知恵と行動力を持った信頼される技術者を育てることを目指しています。卒業後の就職・進学率はほぼ100%で、専門性を活かした企業への就職のほか、新居浜高専専攻科への進学や、国公立大学3年次への編入学など、さまざまな進路に進んでいます。

COMPASS5.0蓄電池拠点校としての人材育成の取組

 令和5年度より、国立高等専門学校機構におけるCOMPASS5.0 (次世代基盤技術教育のカリキュラム化)の「蓄電池分野」が創設され、蓄電池に関わる人材育成と確保に向けて、石川工業高等専門学校と本校の2校が拠点校に採択され、関西蓄電池人材育成等コンソーシアムと連携して活動を進めています。この取り組みは、経済産業省や電池サプライチェーン協議会、電池工業会などの支援を受けて展開されており、新居浜高専は蓄電池産業の未来を担う人材育成において、中心的な役割を果たしています。

<これまでの主な活動と実績>
 新居浜高専は、関西蓄電池人材育成等コンソーシアムと連携し、蓄電池教育のための教材を開発しました。この教材を使ったデモ授業を、機械工学科や環境材料工学科の学生を対象に実施し、その様子を他高専の教員や関連企業の関係者に公開しています。これにより、全国の高専での蓄電池教育の普及を目指しています。
 学生が蓄電池の原理を理解できるよう、ニッケル水素電池、ダニエル電池などの基礎実験を取り入れています。また、模擬的なリチウムイオン電池の組み立て実習を開発しました。開発した実験教材を全国高専の学生・教員に試行してもらうために、スプリングスクールやサマースクールを開催し、学生の専門知識を深める活動を行うとともに、教材の改善を継続して行っています。
 その他、蓄電池製造工場の見学会も定期的に行っています。

左:新居浜高専学生を対象としたデモ授業の様子
右:小型リチウムイオン電池実験の様子(グローブボックスでの作業)=ともに新居浜高専提供

宇宙利活用人材育成の取組

 宇宙産業界は、ロケット打ち上げや人工衛星運用が従来の代表的なイメージであり、それらの多くは国のプロジェクトが牽引してきました。近年では民間が主導するロケット打ち上げや衛星の数が世界中で飛躍的に増加し、宇宙にモノを運ぶだけでなく「いかに宇宙を利用して社会に活かすか」という観点で宇宙を捉えることが重要視されています。宇宙の実利用が増加すると共に、急激な市場拡大が予想されている宇宙産業に貢献できる人材の育成のため、新居浜高専では国立高専で初となる「宇宙工学コース」の正規科目化を目指しています。

 2025年現在はその試行として、宇宙産業界の概要を学ぶシリーズ講義と、社会課題の抽出・解決について学ぶワークを中心とした講座を、全国の国立高専の希望者を対象に実施しています。一方で、宇宙産業界で活躍できる人材としては国際的なコミュニケーション能力向上も重視しており、新居浜高専が主体となってタイ高専(KOSEN-KMITL)を訪問し、現地学生と宇宙をテーマとした共同ワークも実施しました。これらの取り組みを通じ、宇宙産業を始めとして幅広く活躍できる次世代の人材育成に挑戦しています。

左:宇宙産業概論の一場面(協力:一般社団法人SPACETIDE)
右:衛星データ利活用実習の様子(協力:株式会社スペースシフト)=ともに新居浜高専提供

 このように新居浜高専ではさまざまな人材育成のための教育を展開しております。これからも社会のニーズに対応した教育の高度化を図っていきます。

【新居浜高専へのアクセス】
■電車
JR新居浜駅から徒歩(約20分)
■バス
JR新居浜駅からせとうちバス乗車、「新居浜高専前」下車(乗車時間約3分)