8月31日は、「8(ヤ)3(サ)1(イ)」との語呂合わせから「野菜の日」です。野菜は他の食べ物に比べてビタミンやミネラル、食物繊維など栄養素が多く含まれているため、厚生労働省は「健康日本21」(第三次)で、食べる野菜の量の目標値を1日350グラムとしています。しかし、2023年国民健康・栄養調査によると、その平均値は256グラムで、2017年の288.2グラムから毎年、少しずつ減っています。
農林水産省が8月21日に開いた「『野菜の日』シンポジウム」で、厚生労働省栄養指導室室長補佐の斎藤あきさんは、「目標値との差は、たとえばホウレンソウのおひたし小鉢1皿分ぐらい。毎日、野菜と果物をあと一皿加えてみてほしい」と呼びかけました。
ベジチェック 食べている野菜の量を「見える」化
私たちはいったい毎日、どのぐらいの量の野菜を食べているのでしょうか。それを「見える化」したのが、カゴメの「ベジチェック」=写真下=です。
野菜、特に緑黄色野菜(*注)を食べると、その色素成分であるカロテノイドが体に吸収され、それが皮膚にもたまります。カゴメはドイツの光学センサー会社と協力し、手軽な方法で皮膚のカロデノイド量を算出し、食べた野菜の量をそのデータから推定する仕組みを開発しました。
手のひらの親指の付け根あたりをセンサーに押し当てると、約30秒後に「野菜摂取レベル」が1~12の値で示されます。野菜を取る量が少ないほど値は低く、「7~8」が1日350グラムの野菜をとっていると推定される値です。

同社は、「野菜摂取レベル」を自分で確認できるだけではなく、数値を上げようとより多く野菜を食べる心がけにつながることがこのベジチェックの強みだと話します。2019年から今までに自治体や企業、スーパーなどに約5500台を貸し出していて、データを蓄積して改良を重ねています。2024年には700万回測られ、平均値は5.8だったとのことです。
(ベジチェック常設店舗はこちらhttps://healthcare.kagome.co.jp/service/vege-check-shop-1)
食育にも活用
子どもたちに野菜の役割に気づいてほしいと、同社は各地の教育委員会と協力し、ベジチェックを活用した「食育」にも力を入れています。
東京都町田市教育委員会とは授業指導案やワークシートなどの副教材を共同でつくり、2023年度から市内の一部の小学校で本格的に利用しています。子どもたち自身がベジチェックで「野菜摂取レベル」を測ったのち、野菜の役割や食べ方の工夫などを学習してそれぞれ目標を決めます。その日々の手応えをワークシートに記入して、1カ月後に再び測ってその変化を確かめます。「野菜摂取目標値1日350グラム」は大人を対象にしたもので、子どもの目標値は明確には定められていません。そのため、「食育」では前回より数値を上げることが目標。値が上がった子どもが7割に上った小学校もあるそうです。
「カゴメ」健康サービス開発グループ担当課長、信田幸大さんは「野菜をいつもより多く食べて値が変わったら、子どもたちは野菜を食べる成果と意義を実感するはず。将来、就職や結婚、子育てなどで食生活が変わるとき、ベジチェックの経験を思い出して、野菜を食べることを心がける人が増えれば、引いては日本人全体の食生活がよくなるのではないでしょうか」と期待を寄せます。

野菜を食べる意義や食べ方の工夫などを授業で学ぶ子どもたち。スーパーにベジチェックを置いたり、子どもたちが描いた食育ポスターを店に張ってもらったりするなど地域ぐるみの取り組みにもなっている=東京都町田市教育委員会提供

町田市の栄養教諭とカゴメとが作ったワークシートの一部
朝ご飯にも野菜を
日ごろ食べる野菜の量を増やすにはどうしたらいいのでしょうか。
信田さんによると、「野菜摂取レベル」が目標に達しない人に多いのが、朝食を食べていないか、食べても野菜抜きになっていること。「朝は忙しいとは思いますが、プチトマトを添えたり、冷凍ブロッコリーを電子レンジで温めてドレッシングをかけて食べたりするなど、少しでも野菜を加えてほしい。昼や夜に比べ、朝は野菜の栄養の吸収効率がいいという調査結果もあるので、朝ご飯で野菜を食べることをぜひ意識してほしい」と話しています。
(注)緑黄色野菜……ホウレンソウ、ブロッコリー、トマト、ニンジンなどカロテン(ビタミンA)を多く含んだ野菜