【ニュースがわかる2024年10月号】巻頭特集は「発明が世界を変える」

愛子さま20歳、成人皇族に【ニュース知りたいんジャー】

天皇、皇后両陛下の長女愛子さまが1日、20歳の誕生日を迎えました。現在の皇室には、未婚の女性皇族が5人いて皇室の活動を支えています。しかし、秋篠宮家の長女小室眞子さんのように、女性皇族は一般男性と結婚すると皇室を離れます。皇族数の減少が心配される中、女性皇族のあり方はどうなっていくのでしょうか。皇室取材歴20年以上の大久保和夫・毎日新聞客員編集委員に知りたいんジャーが質問しました。【まとめ・田村彰子】


 ◇「皇族」ってどのような人たちなの?


 いきなり質問です。天皇陛下って皇族でしょうか? 答えは、天皇陛下は皇族ではありません。皇室の決まり事を定めている皇室典範という法律があります。そこで皇后、皇太后(天皇の母など)、親王男のお子さまと孫)、親王妃、内親王(女のお子さまと孫)、王(天皇の男のひ孫世代以下)、王妃及び女王(天皇の女のひ孫世代以下)を皇族とするなどと皇族の範囲を決めていますが、その中に天皇は入っていません。天皇は他の皇族とは異なった特別な位置づけになっていて、日本国憲法第1条に「日本国の象徴」と規定されています。
 「皇室」という言葉は、特に法律で定めがなく、天皇はじめ皇族全体を表す言葉として一般的に使われています。天皇と皇族は国籍に代わり、皇室の戸籍に当たる「皇統譜」に登録されています。


 ◇愛子さまが20歳になられたけど、成人皇族って何をするの?


 皇室の成人年齢は、立場と男女で異なります。天皇の息子と男の孫は、天皇の地位を継ぐ「皇位継承者」という特別な立場にあるので、成人の年齢を18歳としています。他の男性皇族と女性皇族は、今の一般の人と同じで20歳で成人となります。
 1日に20歳の誕生日を迎えた愛子さまも成年の儀式を行い、ローブモンタントやローブデコルテというロングドレスと、ティアラ(王冠)を頭につける成人皇族としての最高の儀礼服で、天皇、皇后両陛下らにあいさつをします。
 成人皇族は、皇族としての仕事である公務を行います。天皇は憲法で定められているもの以外にも、被災地への訪問など数多くの公務をこなされています。皇族の公務も、法律の決まりはないですが、学術、文化・芸能、スポーツ団体、福祉団体などの名誉総裁などを務めたり、イベントに出席したりしています。

 ◇女性宮家って言葉を聞くけど?


 宮家は、結婚や独立をした男性皇族だけに天皇が称号を与えることで成り立っています。一方で女性皇族は結婚すると、相手が天皇、皇族以外の男性の場合、皇室から離れなければなりません。秋篠宮家の長女、小室眞子さんも結婚によって皇室を離れました。
 現在、皇室は天皇と皇族で17人ですが、そのうち未婚の女性皇族は5人です。さらに今の天皇より若い男性皇族は2人しかいないので、女性皇族が結婚で皇室を離れることになると、皇族の活動が大幅に減ってしまいます。それでは、皇室の存在感が薄れてしまうと心配されています。
 そこで、皇族の数を減らさない対策として考えられた案の一つが女性宮家をつくることです。結婚した皇族女性でも、宮家を作って皇族としての活動を続けられるようにするというものです。しかし皇室典範の改正が必要で、女性天皇や女系天皇につながるとして、反対意見もあります。


 ◇女性が天皇になったことはないの?

 現在は皇室典範の定めで、女性皇族は天皇になれません。しかし、古代の推古天皇をはじめ、江戸時代まで8人10代の女性天皇がいました。明治時代からは、皇族の男子のみが天皇になっています。
 8人の女性天皇は、天皇の娘などでした。在位中に結婚をすることなく次の男性の天皇に引き継いでいて、女性天皇の子どもが皇位を継ぐことはありませんでした。
 女性天皇が天皇とゆかりのない男性と結婚し、子どもが生まれて、その子が天皇になった場合を女系天皇といいます。女性天皇とは別です。今の天皇は126代目ですが、女性天皇がいたことがあっても女系天皇はいなかったとされているのです。
 日本では、皇室は男系男子でつながってきた歴史と伝統を守ることが重要だという考え方が根強くあります。一方でヨーロッパでは、女性の王位継承を取り入れている国がほとんどです。男でも女でも、最初に生まれた子どもが王位をつぐ順番1位としている国も多くなっています。


 ◇これから皇室はどうなるの?


 皇室の抱えている課題は、大きく二つあります。一つめは、天皇を継ぐこと(皇位継承)ができる男性皇族が3人だけということです。将来の皇位継承者は、秋篠宮家の長男悠仁さましかいません。現在の法律では、悠仁さまが結婚されて男のお子さまが生まれないと、天皇は続かないことになります。
 二つめは、皇族が減少し続けていることと、高齢化が進んでいることです。天皇はじめ皇族方は長距離を移動して被災者をはげますことも多く、体力的にも大変な活動です。人数の減少によって、皇室の活動に影響が出てきます。
 政府は今年3月、専門家の会議をつくり、皇位継承の課題や女性宮家の創設についての話し合いを始めました。その中では、現行通り、天皇の子どもの男性皇族による皇位継承を基本にして、皇族の数をどう確保していくかの方法を考えていくことが確認されています。
 天皇は日本の象徴とされています。どのような皇室にしていくのかは、主権者である私たち国民が考えなくてはならない問題なのです。(2021年12月01日掲載毎日小学生新聞より)