スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は共立女子中学校を紹介します。

内に秘めた力を引き出し表現する学び。生徒たちは次々と見事な花を咲かせる
<注目ポイント>
①他者と協働しながら一人ひとりが輝く「共立リーダーシップ」。
②古典的な手法を習得し、表現力・発想力を育む中学・美術教育。
③創造力を駆使して思いをカタチにする高校・美術教育。
共立ならではのリーダーシップ開発
出版社や古書店が集まり、文化的な香りを漂わせる地区にある共立女子中学校。多様な価値観を受容し、他者との協働を大切にする伝統が、創立時より脈々と受け継がれている。その理念に基づき、教育方針のひとつとして掲げているのが「共立リーダーシップ」だ。集団生活の場では、強い発言力で周囲を率いるリーダーを求めがちだが、同校が目指すのは「一部の人が上に立つのではなく、全員が自分の良さを出しつつ互いに学びあうこと」。中学1・2年で修める「リーダーシップ開発」では、グループワークを通じて自分らしいリーダーシップを発見し、スキルを高める。探究担当の金井圭太郎教諭は、「積極的に発言する人だけでなく、記録係、ムードメーカーなど、誰もが大切な役割を担っていることを認識することで、自己有用感が高まり、相手の立場を尊重できるようになります」とリーダーシップ開発がもたらす効果について語る。 実践力をより高めるため、企業とコラボレーションも行っている。例えば企業に課題を出してもらい、授業にも参加してもらう。リサーチやプレゼンの力をつけるのももちろんだが、チームの中で各自が得意な面を発揮し、互いに影響を与え合えるようになることを重視する。
豊かな表現力育成のための美術教育
各自の個性を伸ばし、人間として成長させることを第一に考える同校では、美術教育にも重点が置かれている。AI技術が発達し、知識を多く蓄積しているだけでは評価されない時代、人間しか持ち得ない「発想力」「判断力」「表現力」が大きく問われるのが美術。豊かな創造力を育てるため、多彩なプログラムが組まれている。軸となっているのは、CGなどの先進的技術と油彩などの古典的技術を並行して習得することだ。
まず中1では、西洋美術の古典技法を学び、デッサンからこの学年では珍しい油彩による静物画まで全員が制作する。なかでも「自画像」は、自分と向き合う経験になると語る景山誠校長。「思春期という多感な時期に、内面と向き合う経験は意味のあること。普段陽気で明るい生徒が、驚くほど暗い色調の自画像を描くこともあります」。自分の奥深い部分と向き合うことで、表層的ではない内面が見えてくるという。美術の技術とともに、自分を客観視する力も磨かれていく。
中2で制作するCGを使ったコラージュでも、自分の写真を入れるのが必須となっている。ただ写真を組み合わせるのではなく、周囲の環境との関係性について考えながらの作業となる。中3ではCGによるアニメーション制作に挑戦。8秒間のなかに起承転結、物語性をもたせるという本格的な動画制作だ。高度なスキルと集中力が要求されるが、作業を楽しみ、授業外でもアニメーションを作る生徒も出てくるという。創ることが「喜び」になれば、可能性は無限大だ。

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