大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

スクールエコノミスト2025 WEB【学習院女子中等科編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は学習院女子中等科を紹介します。

広い視野と深い思考力を育む 人間教育としての国語授業の学び

<注目ポイント>

①読書ノートの習慣づけが思考力を育み、自分の考え・気持ちを言語化。

②広い視野や感性を育み、表現する楽しさを知る俳句・短歌の授業。

③人生の心の支えとなる“幹”を丁寧に育てる人間教育で培う表現力。

学校のメッセージが表れた入試問題

 「入試問題は学校からのメッセージ」とも言われるが、学習院女子中等科の入試にはそれが如実に現れている。国語問題の全問が記述式という点からも同校の表現力重視への強い思いが見て取れる。家本佳代子教頭は「読むことを楽しめる問題文で、設問を読み進めながら問題文への理解を深めてほしいと思います」と語る。なかには国語の入試問題の面白さが入学の動機となった生徒もいるという。記述式へのこだわりは入学後の定期考査でも踏襲され、表現力重視の教育は国語のみならず全教科で共有されている。

読書ノートは感性と深い思考力を育む

 国語の授業では中1・2の週1コマを「国語2」として主に読書に関する学びの時間とし、中1の週1コマを「表現」に充てる。

中1の「国語2」の授業は図書館活用方法を司書から学び、図書館で自由に本を選ぶことからスタートする。その後は各教員によって工夫がなされ、例えば「自分が紹介したい本」などテーマを決めての読書や、グループで読んだ本の内容についての話し合い、自分の意見や感想の発表など様々だ。幅広いジャンルの本から良書を選び、課題図書を設定するが、中1・2では小説が中心となる。「評論などで論理的に説明されて頭で納得するものと、小説で心に直接届くものは異なります。何かに役立てるために本を読むというよりも、中等科では読書に没頭する時間を楽しんでほしい、それが結果的に感性を豊かにすることにつながると思います」と国語科の丸田由紀子教諭。

 また中1・2では「読書ノート」の作成を重視している。記録したノートは教員に提出し、教員はコメントを記して返却する。記録する内容は学年ごとに異なるが、おもな項目は〈書名・作者(編者)・発行所・発行年月日・あらすじ・感想・印象に残った箇所の引用〉など。「どの箇所を引用したかには、必ず理由があります。その理由を深く考えて読み手に説明することは“自分の考えを書く”ことにつながります」と大竹智子教諭。読書ノートを通じ、生徒たちは次第に自分の言葉で深い思考を言語化し自己開示するようになっていくのだ。

 「表現」の授業ではクラスを分割して、スピーチ、発表の仕方や文章表現などを学習。絵を文章で説明したり、「ラーメンが美味しい」を“美味しい”という言葉を使わずに表現するなど、様々な題材で表現力を磨いていく。同時に聞き方の指導もあり、メモの取り方や意識して聞きたい観点などを学ぶ。

図書館では読書を思う存分楽しむことができる