大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

スクールエコノミスト2025 WEB【日本女子大学附属中学校編】

スクール・エコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は日本女子大学附属中学校を紹介します。

自然と自由が溢れた“森の中の学校” 地道な学習の先は海外にも広がる進路

<注目ポイント>

①国際理解教育で芽生える「私に何ができるか」の思い。

②地道な基礎の積み重ねと英語劇で磨かれる豊かな表現力。

③広い視野と寛容性を育む海外研修と海外進学への道。

自主的なアフガニスタンへの寄贈活動

 多摩丘陵の一角に位置し、緑あふれる森の中にある日本女子大学附属中学校。自然の中での学校生活は豊かな人間性と五感を培い、ゆとりある時間の中で中高一貫教育を実践する。「私が私であること・あなたがあなたであること」を尊重し合い、「学びの中心にはいつも“私”がある」を大切に『自学自動』を教育目標に掲げている。

 その教育成果の一つに2002年から始まったアフガニスタンを始めとした国際理解教育が挙げられる。かつては同国の女性教員や女子高生を招聘して交流していたが、現地の政情不安から同校への招聘は難しい状況が続き、現在は日本で活躍する方を招き講演会を行っている。そんな中、「自分たちができることをしたい」と自主的に生徒たちが動き、文化祭で中古ランドセルを集め、同国へ寄贈する活動を実現させた。学ぶ機会を得られない、同じ時代を生きている同国の生徒のことを遠い話ではなく、「私ができることは何だろう」と自分ごととして捉えた結果の行動だ。アフガニスタンという一国の政情、情勢を知ることは同校での国際理解の入口としての役割も担っているようだ。

基礎学習と実践を組み合わせた英語教育

 英語科の教育目標は、基礎的な英語力とともに「自分の言いたいことを書き、話す」というコミュニケーション手段としての英語力、豊かな表現力の習得だ。授業は週5時間だが、その内3時間は分割授業で行われる。各学年とも2学期中旬までに教科書をしっかりと終了させ、残りの時間は、基礎を復習しながら確実に定着させていく。

 これに並行して中1は2学期後半から3学期にかけて週1コマ、英語劇にも取り組む。英語科の本木綾子教諭は、「英語を学び続けるモチベーションを維持するためにも英語を使い、楽しく学習する仕掛けの一つです」と語る。テーマは『アナと雪の女王』『ハリーポッター 賢者の石』など生徒が選び、グループに分かれて同じシーンを演じ、衣装や小道具なども含めてクラス内で競い合う。割り当てられるセリフも3つ程度のため、英語が得意な生徒だけでなく発話・発音に不安がある、あるいは消極的な生徒も無理なく参加でき、そんな生徒が思わぬ活躍をすることもあるという。さらに演劇部員が加わることで、感情を込めた演技もプラスされ表現力も培われていく。「一つの劇を完成させるにはチームワークが不可欠なので協働学習にもなります」と本木教諭。優秀チームはクラス代表として学年全員の前での発表も行われる。

 中3になると、後半はジェンダー問題やマイクロプラスティックゴミ問題などSDGsをテーマに学習するほか、環境先進国フィンランドの中学生とのオンライン交流会も行う。ビデオレターの交換や、2月から3月にかけての交流会本番に向けて12月から日本のおせち料理や正月の風習などの動画撮影・編集と事前準備に取り組み、同世代との交流を楽しんでいる。