大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

「ガチ」は相撲のことば?【日本語をつかまえろ!】

国語の授業をたのしんでいますか? 毎日小学生新聞の連載「日本語どんぶらこ」では、人呼んで「ことばハンター」こと『三省堂国語辞典』の編さん者の飯間浩明さんが身近にあって気になる日本語をとりあげています。金井真紀さんのほっこりしするイラストとともに、ことばの語源や新語や流行語など、気になることばをわかりやすく解説。ことばに関する疑問やモヤモヤがすっきりすると好評です。
この春、連載をまとめた最新刊『日本語どんぶらこ ことばは変わるよどこまでも』が発売されましたが、ことばに興味を持ったあなたも、国語に苦手意識があるあなたも、ことばの森で遊んでみませんか? ここでは既刊の『日本語をつかまえろ!』、『日本語をもっとつかまえろ』から、気になるコラムを一部ご紹介いたします。

 1960年代、「巨人(きょじん)・大鵬(たいほう)・卵焼(たまごや)き」ということばがありました。野球の巨人、すもうの横綱(よこづな)・大鵬、そして卵焼きが、子どもたちの好きなものベスト3だったのです。
 昔は、今以上に野球、さらに、すもうが大人気でした。日本語には、野球から出たことばだけでなく、すもうから出たことばもたくさんあります。
 AさんとBさんが議論をしていた時、まわりの人が「Aさんのほうが正しい」と言ったとします。それを、「Aさんに軍配(ぐんぱい)が上がった」と表現することがあります。
 「軍配」とは、すもうの行司(ぎょうじ)が使う道具です。勝った力士のほうに向けて軍配を上げることから、勝負に勝ったと認められることを「軍配が上がる」と言います。
「胸を借りる」という言い方もあります。ドラマで、新人俳優がベテラン俳優と共演するとき、「先輩(せんぱい)の胸を借りてがんばります」と言ったりします。
 これは、未熟な人が、ベテランにきたえてもらう、ということです。もともとは、力士が、先輩にすもうのけいこ相手になってもらうことを言いました。
 「きょうはガチで暑い」というときの「ガチ」も、すもうから出たことばです。
もとの形は「ガチンコ」。これは、すもうで「真剣勝負(しんけんしょうぶ)」ということです。「真剣」が、いつしか「本当に」の意味に変わりました。意外なところに、すもう由来のことばがあります。

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日本語をつかまえろ!

文:飯間 浩明 絵:金井 真紀 出版社:毎日新聞出版 定価:1,540円

本書の目次

第1章 響きとリズム
第2章 漢字と仮名と
第3章 集団内のことば
第4章 こんな言い方もできる
第5章 相手に届くことば
第6章 国語辞典の楽しみ
第7章 ことばは変わる
第8章 地名は面白い
第9章 令和と万葉集

著者プロフィール

飯間浩明(いいま・ひろあき)

1967年、香川県生まれ。国語辞典編さん者。
『三省堂国語辞典』編集委員。国語辞典の原稿を書くために、新聞や雑誌、放送などから新しいことばを拾う毎日。街の中にも繰り出して、気になる日本語の採集を続ける。国語辞典を楽しむイベント「国語辞典ナイト」でも活躍。おもな著書に『辞書を編む』『小説の言葉尻をとらえてみた』(ともに光文社)『国語辞典のゆくえ』『つまずきやすい日本語』(ともにNHK出版)『ことばハンター』(ポプラ社)『知っておくと役立つ街の変な日本語』(朝日新聞出版)などがある。

金井真紀(かない・まき) 
1974年、千葉県生まれ。文筆家、イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を合い言葉に世界各地で人の話を拾い集めて、文や絵にしている。おもな著書に『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)『はたらく動物と』(ころから)『パリのすてきなおじさん』(柏書房)『子どもおもしろ歳時記』(理論社)『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った 世界ことわざ紀行』(岩波書店)『テヘランのすてきな女』(晶文社)などがある。