推しの城 おもシロ ランキング【月刊ニュースがわかる2月号】

「ベートーベン」?   それとも「ベートーヴェン」?【疑問氷解】

Q 「ベートーベン」と「ベートーヴェン」。どちらの表記が正しいのでしょうか。

教科書の決まりなく、音楽用語に両方記載

 A 「ベートーベン」と「ベートーヴェン」。新聞や雑誌、テレビなどでは確かに二つの表記がみられます。

 毎日小学生新聞では「ベートーベン」を使っています。これは小学生向けに、そのようにしたのではありません。1991年、国の役所の文化庁の会議で「外来語の表記」が議論され、「ヴァ」「ヴィ」などは、一般的には「バ」「ビ」と書くことができるとしたことが基礎になっています。毎日新聞だけでなく、他の新聞やテレビなど多くのマスコミが今もそれを守っています。

 では、音楽の教科書はどうなっているのでしょうか。教育芸術社と教育出版社の2社が、小中学校の教科書を発行しています。いずれも小学生用では「ベートーベン」、中学生用では「ベートーヴェン」と表記しています。2社に聞くと、教育芸術社が発行する「文部科学省編『教育用音楽用語』」にもとづいているといいます。

 最新の「教育用音楽用語」は2013年5月に第3刷りが発行されました。「まえがき」には、学校の教科書で使われる音楽用語の表記は、原則として「教育用音楽用語」によるとしています。

 ページを開くと、ベートーベンは「ベートーヴェン<ベートーベン>」と両方が表記され、「小学校においては< >内に示す表記を用いる」とあります。一方、中学校で「ベートーベン」を使ってはいけないとは書かれていません。他にも、協奏曲「四季」で有名な「ヴィヴァルディ<ビバルディ>」や、バレエ音楽「火の鳥」などで知られる「ストラヴィンスキー<ストラビンスキー>」などもあります。

 そもそも外国語の発音を、日本語に正確に置き換えるのは難しいです。例えば「教育用音楽用語」では、楽器でも「ヴァイオリン<バイオリン>」、「ヴィオラ<ビオラ>」と両方が載っています。

 教育芸術社の担当者は「テストではどちらが正解かという質問が読者からもきます。外国語の名前なので、どちらが間違いともいいにくい。学校の先生には、よく考えて出してほしいですね」と話します。

 文部科学省教科書課の担当者は「現在、教科書検定をする上での決まりはなく、教科書会社や著者の判断に任されています。『ベートーベン』でも『ベートーヴェン』でも、教科書が不合格になることはありません。どちらが正しいというものではないのではないでしょうか」と話していました。【毎日小学生新聞編集部・石塚孝志】(毎日小学生新聞2020年12月22日掲載)

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