Q 宇宙からの侵略者やいん石に対して自衛隊は出動できるのですか(埼玉県、小3)
出動要件の外国や犯罪者にあたらず
A 憲法が専門の木村草太・東京都立大学教授に聞きました。質問を寄せてくれた人は、木村さんが2020年毎日小学生新聞に連載していた「ほとんど憲法」の中で、怪獣映画に登場する「ゴジラ」に対して自衛隊が武器を使って戦うことができない、と解説していたのを読み、疑問に思ったそうです。
自衛隊が国内で出動できる場面は自衛隊法で決められ、大きく言うと三つです。①外国から武力攻撃された時の「防衛出動」②警察では治安が維持できない犯罪者などに対応する「治安出動」③地震や水害などの災害時に救助にあたる「災害派遣」です。
2016年に公開された映画「シン・ゴジラ」の中では、街を破壊し大きな被害を出しながら進むゴジラに対して、防衛出動で自衛隊に対応させることにしました。しかし本来なら、ゴジラは「外国」ではないので防衛出動ができず、「犯罪者」でもないので治安出動もできません。災害派遣で対応することになりますが、災害派遣では武器を使うことができないので、映画の中でしていたように、ヘリコプターや戦車からミサイルを撃ってゴジラを攻撃することはできません。宇宙の侵略者もいん石も、「外国」や「犯罪者」にはあたらないので、同じように考えることができます。
もし宇宙から侵略者が攻めてきたらどうするのでしょうか。法律は宇宙人が襲ってくることを想定していません。急いで国会を開き「X星人特別措置法」を作り、「宇宙人は防衛出動の対象になる」という特別な法律を作ります。国会を開く時間がないほど危機が迫っていれば、法律で定めた範囲を超えて防衛出動し、事態が収まったころに国会で対応を説明することになります。法律の範囲を超えたことは、内閣が自衛隊法を違法に使った職権乱用(むやみに使われること)罪に当たり、その責任を問われます。ただし一刻を争う状況だったということであれば、後に恩赦(特別に罪を許されること)で対応をするという憲法の仕組みがあります。
未確認の生物や想定していない物がいつ攻撃してきてもいいように、「必要な時には自衛隊は武器を使える」という条文を作っておけばよいと考えられるかもしれません。しかし、それでは武力が乱用される恐れがあります。自衛隊が出動できる場面や武器を使える条件をあえて限定し、それを防いでいるのが重要なことなのです。【毎日小学生新聞編集部・田嶋夏希】
(毎日小学生新聞2021年11月9日掲載)
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