推しの城 おもシロ ランキング【月刊ニュースがわかる2月号】

自転車のペダルを後ろにこいでも、後ろに進まないのはなぜ?【疑問氷解】

Q 自転車のペダルを後ろにこいでも、後ろに進まないのはなぜ?(大阪府茨木市 小4)

フリーホイールが力の伝え方を調整

 A 大阪府堺市にある自転車博物館学芸員の長谷部雅幸さんに聞きました。

 自転車はペダルをこぐと、それにあわせてチェーンが動き、チェーンとつながった後ろの車輪が回ることで走ります。

 ペダルを後ろにこいでも車輪が後ろに回らないのは、後ろの車輪に付いている、歯車が付いたフリーホイールという部品のためです。フリーホイールは、ペダルを前にこいだ時はその動きを後ろの車輪に伝えますが、後ろにこいだときは、空回りして、後ろの車輪に力が伝わることはありません。

 一方向からの力しか伝えない構造は、フリーホイールのラチェットという部品がポイントです。ペダルを前にこぐと、ラチェットにツメがひっかかり、後ろの車輪を回転させます。しかし、後ろにこいだ時には、ラチェットとツメが離れてラチェットの上をツメが滑るので、ペダルの回転が後ろの車輪に伝わりません。自転車が走っているときに後ろの車輪が回っていても、ペダルが回らないのも、ツメがラチェットの上を滑っているからです。

 自転車がこのような構造になっているのは、快適性と安全性のためです。

 もしフリーホイールがなければ、下り坂を走っている時にも、ペダルが回転し続けるため、足を止めることができません。また、カーブを曲がる時には、自転車を曲がる方向に傾けますが、後ろの車輪の回転にあわせてペダルが動くと、自転車が傾いているので、ペダルが地面にあたってしまいます。

 ペダル付きの自転車は1861年にフランスのミショーさんという人が「楽に遠くに行ける乗り物」として発明しました。しかしフリーホイールがなかったので、ペダルを常にこいでいなければならず、とても疲れやすい乗り物でした。

 96年ごろにはフリーホイール付きの自転車がイギリスで発売されました。勢いがついている時や、下り坂や追い風の時、足を休めたままでも自転車が進むので、とても楽に乗れる乗り物になりました。

 自転車には後ろにこぐと後ろに進むものもあります。自転車に乗って行うサイクルサッカーという競技で使われます。フリーホイールがついていないので、後ろに下がって素早くボールを追いかけることができます。【毎日小学生新聞編集部・田嶋夏希】

(毎日小学生新聞2020年5月12日掲載)

 

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