Q どうして柿には、渋いものと甘いものがあるの? (新潟県、小3)
渋み成分タンニン、溶けない場合甘く
A そもそも柿には、甘柿と渋柿があります。その違いを、多くの果物を取り扱う東京多摩青果(東京都・国立市)の師岡智治さんに聞きました。どちらも実が熟していない時は渋く、甘柿は成長につれて渋さがなくなっていきます。中国が原産で、かなり早い時期から日本に渡ってきたとされていますが、最初は渋柿だったと言われています。日本で渋柿の突然変異がおこり、渋みのない甘柿が生まれたようです。
では、渋さのもととなっているのは何でしょう。それは実の中にあるタンニンという成分です。お茶にも含まれる渋みの成分として知られています。渋柿のタンニンには、「可溶性」といって水に溶けやすい性質があります。水に溶けやすいので、口の中の唾液と混ざって溶け出して、渋さを感じます。
甘柿の実のタンニンも、実が熟していないうちは可溶性ですが、成長すると水に溶けないものに自然に変わります。それを不溶化といいますが、そうなると口の中でタンニンが溶け出さないので、渋さを感じなくなるのです。渋が抜けるというのは、タンニンがなくなるわけではなく、口の中で溶け出さなくなるということです。
さらに柿は、完全渋柿、不完全渋柿、完全甘柿、不完全甘柿に分かれます。果肉に黒っぽい「ゴマ」と呼ばれるツブが多い柿は甘いのですが、渋柿の中でもわずかに種が入る柿は、種の周りにゴマができてその部分が甘くなります。こうした柿を不完全渋柿といいます。不完全甘柿も、種の数が多いと果肉にゴマが入り甘くなります。このゴマは、タンニンが不溶化して固まったものです。完全甘柿は、基本的に種があり、木の上で渋が抜けます。
八百屋さんなどで買う柿は、渋柿や不完全甘柿でも「脱渋」という作業をされて渋みを抜いた後のものなので渋さはありません。収穫後に炭酸ガスを入れて適度な温度に保った場所に置くことで、実が化学反応を起こしてタンニンを不溶化します。「渋を抜くためには、一定の温度の積み重ね(積算温度)が大事です。そのため、寒い地域には甘柿はあまり育たないと言われています」と師岡さんは説明します。
脱渋をしていても、急に寒くなった時期だとたまに渋さが残った柿がお店に並んでしまうこともあるそうです。その場合は、常温の場所に数日置いておくことで渋さが抜けていきます。
昔から人はあの手この手で柿の渋さを抜いてきましたが、その一つが「干すこと」つまり干し柿=写真上=です。干すことで、水分を抜いてタンニンを不溶化しました。日本人は冬の味覚として、長く柿を楽しんできたようです。【毎日小学生新聞編集部・田村彰子】
(毎日小学生新聞2021年11月16日掲載)
★「疑問氷解」は毎日小学生新聞で毎週月曜日連載中!