この夏、フランスの首都パリでオリンピック(五輪)、パラリンピックが開かれます。サッカーや柔道など、スポーツが盛んなフランスは、芸術やファッション(服飾文化)、食文化が豊かで、多くの国がお手本としてきました。日本でも憧れる人が多い国です。知っているようで知らないフランスについて、知りたいんジャーが調べました。【木谷朋子】
◇どこにあるの?
ヨーロッパの西部に位置しています。大西洋と地中海にはさまれた本土と、コルシカ島など地中海の島の一部が領土です。
本土の北部や西部は平らで、農作物がよくできる豊かな土地です。イタリアやスイスとの国境にはアルプス山脈とジュラ山脈が、スペインとの国境にはピレネー山脈があり、北東部を除いて山と海に囲まれています。
国境を接する国は、ベルギー、ルクセンブルク、ドイツ、スイス、イタリア、モナコ、アンドラ、スペインの8か国。22の地域(日本でいう地方)に分かれ、さらに100の県に分かれています。
また、外国を支配下に置いていた植民地時代の領土の一部が、現在もフランスの一部として残っています。太平洋にある島のニューカレドニアやポリネシアなど、五つの海外県と五つの海外準県、数多くの島を含む海外領土があります。
◇フランス人ってどんな人?
フランスは古代(紀元前)にはガリアと呼ばれ、ケルト人と呼ばれる人が住んでいました。古代ローマ帝国に征服された後、5世紀ごろの民族移動により、フランク族という人たちが住むようになりました。フランクという言葉には「自由な」や「大胆な」という意味があります。フランスという呼び名は、このフランク族に由来しています。
第一次世界大戦(1914~18年)以降、急激に人口が減ったため、世界中植民地から積極的に移民を受け入れました。特に第二次世界大戦(39~45年)の後、30年間にわたる経済成長期に、多くの移民が働きに来ました。
現在も、人口の約1割にあたる約700万人が移民系という多民族国家です。移民の3割をポルトガルやイタリアなどのヨーロッパ人が占め、アフリカ出身者が4割とされます。2015年にあったテロなどの影響で、近年、イスラム系移民の受け入れ制限や難民受け入れ停止を訴える極右政党の勢力が強くなるなど、複雑な問題を抱えています。
◇主な産業は?物価が高いと聞いたよ
フランスは世界第7位の国内総生産(GDP)の国で、ヨーロッパ連合(EU)最大の農業国です。主な食料のほとんどを自給自足でき、「ヨーロッパの穀倉地帯」といわれています。ワインの輸出量も世界最大で、牛乳などもEU諸国に輸出しています。
工業も盛んです。石油化学、自動車、機械、繊維のほか、宇宙航空産業が発達しています。また、発電量に占める原子力の割合が約7割と高めです。
EUの前身、ヨーロッパ共同体(EC)に加盟したのは1958年1月です。2002年には、通貨も「フランスフラン」から「ユーロ」に変わりました。物価が高い理由は、消費税(フランスでは付加価値税)にも原因があります。日本が10%なのに対し、フランスは20%です。
ただ、商品ごとに税率が違います。レストランなどは10%、本や食料品などは5・5%、医療品の一部や新聞などは2・1%です。例えばレストランで食べると10%ですが、テークアウト(持ち帰り)なら5・5%になります。ユニークなのは、国民の生活必需品とされるブラックチョコレートは税率が5・5%なのに対し、ホワイトチョコレートは嗜好品とされ20%の税金がかかるところです。
◇芸術やファッション、食で有名なのはなぜ?
「芸術の国」と呼ばれ、世界中から芸術家が集まります。パリには「モナリザ」で知られるルーブルやオルセーなど、世界的に有名な美術館がたくさんあります。これは、17~18世紀に特に栄えたフランス王室の宮廷文化と深い関わりがあります。
ファッションにおいても世界をリードし、重要な文化産業です。パリはデザイナーにとって憧れの地で、シャネルなど有名ブランドの発祥地でもあります。
一方、世界有数の美食の国といわれ、フランス料理はトルコ、中国と並び「世界三大料理」の一つです。現在、「食の伝統」としてユネスコ無形文化遺産に登録されています。そのため、フランス料理というと高級でおしゃれと思われがちですが、家庭での食事は意外にも普通です。肉や魚に野菜類を添えたものを中心に、パンやチーズが必ず付きます。
「スイーツ大国」としても知られています。エクレアやマカロン、シュークリーム、マドレーヌなど日本でもおなじみの洋菓子は、実はフランスから伝わってきています。
◇有名な世界遺産は?
フランスは「世界遺産大国」と呼ばれています。観光収入は大きく、外国からの観光客数は世界一(2019年)です。世界遺産の数はイタリア、中国、ドイツに次いで世界第4位。現在、世界文化遺産44件、世界自然遺産7件、世界複合遺産1件の合計52件が登録されています。
中でも、北部のノルマンディー地方にある「モンサンミシェルとその湾」や、ルイ14世が造営した世界一華麗な王宮「ベルサイユ宮殿と庭園」などは、世界中から観光客が集まる人気観光地です。パリ五輪の開会式が開かれる予定の「セーヌ河岸」も注目です。(2024年07月10日毎日小学生新聞より)