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【ニュースがわかる2024年6月号】巻頭特集は地震大国ニッポン 被害を減らすために

北陸新幹線 福井まで開業【ニュース知りたいんジャー】

東京駅から金沢駅(石川県金沢市)の間を結んでいた北陸新幹線が、その先の敦賀駅(福井県敦賀市)まで延ばされ、3月16日に開業しました。これによって、関東地方から列車で行くには乗り換えが必要だった福井県へ、1本の列車で行けるようになりました。また、富山・石川・福井・新潟・長野の各県も新幹線で行き来できるようになり、観光や経済が活発になると期待されています。新しい新幹線にまつわる話題をまとめました。【野田武】


 ◇どこを走っているの?


 金沢駅から敦賀駅の間の約125㌔㍍の区間です。福井県内に新幹線が通るのは初めてです。石川県内と合わせて、新しく六つの駅ができました。
 新しくできた駅は、石川県内が小松駅(小松市)と加賀温泉駅(加賀市)。福井県内は、芦原温泉駅(あわら市)、福井駅(福井市)、越前たけふ駅(越前市)と敦賀駅です。
 東京―敦賀間は、直通列車で最も速いタイプの「かがやき」と、長野から福井にかけて各県の駅で多く停車する「はくたか」が、1日計14往復しています。最も速い列車だと、東京―福井間は2時間51分で、東京―敦間3時間8分で結ばれます。


 この他に、主に富山―敦賀間を結ぶタイプの「つるぎ」も走ります。富山・石川・福井は「北陸3県」とよく呼ばれ、経済や文化的なつながりがあり、人の行き来も盛んです。このため、延伸が地域全体の発展につながりそうです。

 北陸新幹線の金沢—敦賀間が延伸開業し、金沢—小松間を走行する「かがやき501号」=石川県内


 ◇沿線の見どころは?


 新しくできた6駅のうち二つの駅名に「温泉」が入っているように、温泉の多い地域です。山代温泉や山中温泉(いずれも石川県加賀市)がよく知られています。
 また、福井県勝山市は恐竜の化石がたくさん発掘されています。市内にある県立恐竜博物館は、世界有数の展示・研究施設です。
 一方、黄色や緑など鮮やかな色合いの九谷焼(石川県)や、素朴でシンプルな見た目特徴の越前焼(福井県)など、陶器の生産も盛んです。
 延伸区間には珍しい橋もあります。福井県の九頭竜川にかかる「新九頭竜橋(長さ415㍍)です。車の道路と新幹線(道)が、同じ橋脚で支えられる構造をしていて、こうした構造は日本で初めてのものです。真ん中を新幹線が通り、両方の外側を車が走ります。そのさらに外側には歩道もあります。


 ◇今までの列車はどうなった?


 今回の延伸開業で、それ以前に金沢―敦賀間を走っていた在来線の北陸線は、JR西日本から、地域ごとに二つの会社へと経営・運行が移りました。3月16日から、石川県内の金沢―大聖寺(加賀市)間は「IRいしかわ鉄道」が、大聖寺―敦賀間は「ハピラインふくい」が列車を運行しています。大阪と石川県を結ぶ北陸線の名物列車、特急サンダーバードは、大阪―敦賀間に短縮され、石川県と福井県の大部分で運行を終えました。

特急サンダーバード、大阪行きラストラン ホームで見送る関係者 和倉温泉駅 /石川


 別会社になったのは、新幹線と同じ区間で在来線を走らせるのは、JRの経営にとって負担となるためです。こうした新しい新幹線(整備新幹線と呼ばれます)が開業する場合、沿線の自治体に認めてもらった上で、JRから経営が移される仕組みになっています。
 ハピラインふくいは、JRの頃よりも普通列車の運行本数を増やすなどして、沿線の人が便利になるよう工夫しています。一方で、限られた地域での列車運行でお金を稼ぐのは難しく、運賃はJRの頃と比べて約15%値上げされました。


 ◇終点の敦賀ってどんな街?


 日本海に面した敦賀湾の一番奥にある港町です。敦賀港はコンテナ船やフェリーが立ち寄る、日本海側の主な港の一つです。
 江戸時代には、海産物を北海道から日本海・瀬戸内海経由で大阪へ船で運んだ「北前船」の寄港地の一つでした。敦賀は京都からも近いため、積み荷の中継地点となりました。中でも料理に使う昆布は、敦賀で加工業が盛んになりました。今も昆布を専門に扱う店や会社があり、特産品となっています。
 1882(明治15)年には日本海側で初めて鉄道が通り、交通の面で重要な場所でもありました。現在の敦賀市の人口は約6万3000人。福井県南部の中心都市です。市内にある「気比の松原」は、海と砂浜、松林がつくる風景の美しさで知られています。夏には海水浴場が開かれます。
 また、敦賀市とその周辺は、関西地方へ電気を送るために造られた原子力発電所(原発)が多い地域でもあります。

新型コロナ 開設中止が決まった敦賀の「気比の松原海水浴場」 /福井


 ◇大阪までつながるの?


 最終的には敦賀から大阪まで、さらに延伸される計画があります。福井県の小浜市や京都市、京都府京田辺市を通る約140㌔㍍のルートです。
 大阪までつながれば、北陸地方と関西地方の間の行き来が便利になります。また、東京と大阪を結ぶ新幹線が、東海道と北陸の2ルートできることになります。このため、地震などの災害で東海道新幹線がストップしても、東京―大阪間で新幹線の運行を続けられるという利点もあります。
 ただ、工事を始める前には、自然環境に与える影響を調べることが欠かせません。「環境影響評価」(アセスメント)といいますが、この作業が遅れています。
 また、大阪までの延伸区間の約8割は地下を通るトンネルになる見込みで、難しい工事も予想されています。国土交通省は2025年度の工事開始を目指していますが、いつ完成するのか見通しは立っていません。(2024年04月03日毎日小学生新聞より)