【ニュースがわかる2024年12月号】今年もやります!2024年 重大ニュース

国と国をつなぐ 外交の窓口「在外公館」【ニュース知りたいんジャー】

国際的なニュースで、「大使館」や「領事館」という言葉をよく耳にします。これらは「在外公館」と呼ばれ、国と国との関係をつなぐための施設です。どのような役割を担っているのでしょうか。【長岡平助】

◇何をするところなの?

 在外公館とは、ある国が他の国とつながりを持つ拠点として、他の国に置く施設です。大使館や領事館のほかに、総領事館や公使館、国連など国際機関の政府代表部があります。

 日本は大使館と総領事館、政府代表部の三つを世界各地に置いています。その数は200を超えます。また日本には、約250の外国や国際機関などの在外公館(駐日外国公館)があります。

 大使館は、基本的に各国の首都に置かれています。国を代表する施設で、相手国との交渉や連絡、政治・経済などの情報集めなどを行います。また旅行や仕事でその国を訪れている、自国の人の命や財産を守ります。

 総領事館は、各国の主要な都市に置かれています。たとえば、日本と交流が盛んなアメリカには、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ホノルルなどたくさんの都市に日本の総領事館があります。その地域にいる自国の人を守ったり、日本の文化を紹介したりもします。

 政府代表部は、国際機関に対する日本政府の窓口です。国連日本政府代表部はニューヨークにあります。このほかにヨーロッパ連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)などに対するものがあります。

◇どんな人が働いているの?

 在外公館で働く公務員を外交官といいます。施設のトップ(長))は大使館だと大使です。公使館は公使、総領事館は総領事、領事館は領事、政府代表部は大使です。このうち最も地位が高いのが大使で、正式には「特命全権大使」といいます。

 日本では、大使になるには、内閣に任命されて、天皇に認められること(認証)が必要です。相手国に行った後は信任状という公文書を、相手国のトップなどに渡します。

 日本の大使の多くは、国の役所である外務省の職員ですが、他の役所や民間から起用されることもあります。

 在外公館では他に、軍事情報を集めたりその国の軍と交流したりする自衛官(防衛駐在官)や、相手国の人を招いたパーティーなどで腕を振るう公邸料理人などが働いています。

◇特権があるって本当?

 在外公館や外交官には、国の代表として仕事をよりよく行えるように特権が与えられています。
 ウィーン条約という外交関係についての国際的な決まり事が根拠になっています。ウィーン条約は1961年に採択され、64年に発効(効力を持つこと)しました。

 受け入れ国は、たとえ警察の捜査であっても、勝手に在外公館に入れません。在外公館と本国が交わす文書を見ることもできません。また受け入れ国には、在外公館の威厳を損なわないようにつとめる責任があります。

 外交官は移動・旅行や通信の自由が認められ、受け入れ国の法律によって税金を払うことや裁判にかけられることから免れます。

◇閉じた総領事館があると聞いたけれど

 在外公館は、自分の国と受け入れ国との緊張が高まると影響を受けることがあります。
 最近では、アメリカと中国の例があります。7月24日、アメリカ南東部の都市・ヒューストンにある中国の総領事館が閉鎖されました。アメリカが中国に対し、「スパイ活動の拠点だ」と訴え、3日以内に閉じるよう求めました。これに対し中国も同月、南西部の都市・成都にあるアメリカの総領事館の閉鎖を求め、閉じさせました。背景には、人権の問題や経済をめぐりアメリカと中国の対立が激しくなっていることがあります。

 過去には、中東の国イランの首都テヘランで若者たちがアメリカ大使館を占拠し、外交官を人質に取る事件が起こりました。1979年のことです。人質は1年以上たってようやく解放されましたが、アメリカとイランの対立は決定的になりました。80年以降、国交が断たれた状態が続いています。

◇日本の在外公館はふえているの?

 日本の在外公館は最近、毎年新設されています。2019年1月にはベラルーシに大使館を、フィリピンのダバオに総領事館を開きました。

 ベラルーシはヨーロッパ連合とロシアの間にあり、地理的にも重要な国です。また、ダバオはフィリピンのドゥテルテ大統領の地元で、政治的重要性が高まっています。日系企業や日本人も多いです。20年1月には南太平洋の島国・バヌアツに大使館を新設しました。

 外務省の在外公館の整備方針では、大使館を新設する基準として、貿易量や日本人の数、進出している企業数などを考えながら、安全保障上の重要性や経済上の利益など、その時々の国際情勢を踏まえて総合的に判断するとしています。また、国際社会の中で存在感を保ち、国の利益をしっかりと確保していくために必要だとしています。

※写真は駐日英国大使館=東京都千代田区一番町1で2018年12月撮影
(2020年09月16日掲載毎日小学生新聞より)