日本と中国が国交を正常化し、今年で５０周年になります。近年、中国公船の日本領海への侵入や、台湾の問題などで緊張関係にありますが、歴史的には長い付き合いのある国です。これまでどんな影響を受け、今後はどんな関係になっていくのでしょうか。【大谷麻由美】
◇交流はいつから始まったの？
日本と中国の交流についての最初の記録は、中国の漢（前漢、紀元前２０２～紀元後８年）という王朝の時代の歴史書「漢書」にあります。倭（日本）の国王が中国に定期的に使節を送って、貢ぎ物をしていたと書いてあります。
江戸時代の中期には、福岡市で「漢委奴国王」（委は倭の略）と刻まれた黄金の印章が発見されました。中国の「後漢書」に、西暦５７年に倭の奴国の使節が訪れ、後漢の皇帝、光武帝が印章を授けたと書かれていて、この印章だと考えられています。
しかし、人々の行き来はもっと前からありました。北陸から九州にかけての日本海側の各地で発掘された、古代中国の銅の剣や鏡などから分かっています。このように日本と中国の交流の歴史は２０００年を超えているのです。
◇中国から何が伝わったの？
中国では黄河と長江という二つの大河のほとりに紀元前６０００～５０００年ごろに文明が生まれました。紀元前２２１年には秦という王朝が中国史上で最初の統一国家を作り、政治、経済、文化が発展します。中国は、長らく東アジアの中心の国でした。
中国から日本に伝わったものはたくさんあり、米作りや機織り、漢字もその一つです。６～７世紀には暦や政治の仕組み、都の造り方を中国に学びました。漢字の伝来時期は、４～５世紀とされています。１３～１６世紀には、中国のお金を日本で使っていました。
文化や制度を学ぶのに、大きな役割を担ったのは、６～９世紀に日本から中国に何度も派遣された遣隋使、遣唐使です。１回の派遣で５００～６００人が参加したといいます。命がけの船旅でした。奈良時代の７５３年、中国の僧・鑑真和上は、６回目の渡航でようやく来日を果たし、日本の仏教界に大きな影響を与えました。
◇なぜ日本と戦争したの？
日本は明治時代になると近代化を進め、ヨーロッパの国々にならって外国への拡張を始めました。中国の清朝を破った日清戦争（１８９４～９５年）で、台湾などを領土にしました。さらに、日露戦争（１９０４～０５年）や第一次世界大戦（１４～１６年）で中国東北部を支配しました。その間、中国は１２年に清朝から中華民国にかわります。
日本は資源も乏しく、深刻な不況に陥っていたこともあり、中国東北部の権益を守ろうと、３２年に満州国を建国しました。反発する中国に対し、日本は軍事行動を起こし、３７年に日中戦争に突入しました。戦争は中国の北部から南部まで広がり、多くの中国人が日本軍に殺害されました。戦争は４５年まで続きました。
◇どうやって国交正常化したの？
中国では１９４９年１０月１日、共産党の毛沢東が中華人民共和国の建国を宣言しました。内戦を続けていた蔣介石が率いる中華民国の国民党は台湾に追われました。国交を結ぶとは、国と国がお互いに主権国家と認め、相手国に大使館を置いて外交官を駐在させることです。日本は５２年、アメリカの後押しもあって台湾の中華民国と平和条約を結んだため、台湾側と激しく対立する中華人民共和国との国交はありませんでした。
ところが７２年２月、アメリカのニクソン大統領が中国の北京を突然訪問し、両国の「関係正常化」を打ち出しました。日本も同年９月、当時の田中角栄総理大臣が北京を訪れました。中華人民共和国の周恩来首相と話し合い、戦争で中国の国民に与えた重大な損害について反省すると記した「日中共同声明」に調印し、国交を正常化しました。日本は「台湾は中国の不可分の一部」という中国の立場を「十分理解し尊重」するとし、中国は日本に対する戦争賠償請求を放棄しました。
◇現在はどんな関係なの？
日本と中国が国交を結んで以来、両国は経済や人々の交流で関係を深めてきました。ただし１９９０年代半ばから、中国と台湾もそれぞれ領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島の扱いや、過去の戦争をめぐる歴史認識の問題が影を落とします。
ウクライナに侵攻したロシアに対する中国政府の態度や、中国とアメリカの関係悪化も、日本人の対中感情に影響しています。中国人の対日感情が「良くない」は６割なのに対して、日本人の対中感情が「良くない」は９割に上るという調査結果もあります。
しかし、貿易相手先としては、日本にとって中国は第１位、中国にとって日本は第２位です。日本を訪れる外国人観光客、日本で暮らす外国人、日本語を学習する外国人のいずれも、世界で一番多いのは中国人です。日本と中国は、切っても切れない関係なのです。（2022年09月28日毎日小学生新聞より）