横綱の綱ってどうやって作るの?
国技と言われ、日本の伝統文化でもある相撲。1500年以上前から続く相撲の魅力や素朴な疑問を、「大相撲中継」の編集長である北出幸一さんが答えてくれる「教えて編集長!」。今回のキーワードは「横綱の綱」です。
Q 編集長、白鵬関や鶴竜親方が土俵入りのときなどに締めている白い綱は何?
A それが「横綱」だよ。番付で「横綱」の地位にまで上り詰めた力士しか付けることができない特別な綱なんだ。現在は東京・両国の国技館で開かれる1月、5月、9月の場所の前に新しく作っていて、新横綱が誕生したときは、その度に作るんだ。綱を作る作業を「綱打ち」と呼んでいて、横綱が所属する部屋や同じ一門で綱打ちをしたことがある力士や世話人、若者頭など20人前後が力を合わせてやるんだよ。
Q 編集長、どんな材料を使って、どうやって作るの?
A 表面を覆っている白い布はさらし木綿だね。幅が50センチほどで、長さは8メートルほどもあるんだ。中には麻の繊維が詰めてあって、それは幕下以下の力士(若い衆)が米ぬかでもみほぐして干して、柔らかく仕上げるんだよ。綱は両端に向かってだんだん麻の量を減らして細くしてあるね。逆に、締めると横綱のおなかのところに来る中心部は麻を増やしていちばん太くしてある。芯には銅線がはいっているね。
Q 綱はねじってあるようだけど、どうやってるの?
A そう、実は3本の綱をより合わせてあるんだよ。力士たちは綱を3本作ったあと、白い手袋をはめて1本ずつねじるんだ。それが済むと、みんなで「ひ、ふ、み、それ、イチ、ニィ、サン」という掛け声に合わせて、ねじった綱3本をより合わせるんだ。「イチ、ニィ、サン」のところでは太鼓もたたいて調子を合わせるんだけど、これが綱打ちでは最大の見せ場だね。より合わせた結果、長さは4メートル50センチほどになるんだ。それから、古い綱と並べて長さを比べ、横綱の体に合うように調節し、はさみとペンチで端を切り落として完成だ、横綱は出来たての綱を締めてみて感触を確かめながら土俵入りの所作をやってみて、次の場所に備えるんだよ。
Q 白鵬関と鶴竜親方では、横綱にも違いがあるの?
A 土俵入りの型は2つあって、それぞれで綱の締め方も違うから、長さや重さが少し違うね。具体的に言うと、白鵬関が不知火型、鶴竜親方が雲龍型。不知火型は腰のところに輪を2つ作る締め方で、雲龍型は1つなんだ。だから、力士の体格にもよるけれど、輪が2つになる不知火型の綱の方が、雲龍型用の綱より長く重くなるね。綱は重さが約10キロあるそうだから、土俵入りでは化粧まわしと合わせて20キロ以上。かなりの重労働なんだ。
Q 新しい綱を作ったあとで、古い綱はどうするの?
A 綱は2場所使うたびに新調されるから、毎年3本ずつ使われなくなる勘定だけど、たいてい博物館や学校、後援者などに贈られるね。
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