領土って何だろう【月刊Newsがわかる6月号】

スクールエコノミスト2026 WEB【桐朋中学校編】

中学生が定理を発見し論文発表

 栗原教諭がめざすのは、創造的な数学教育だ。ニュートン、ガロア、オイラーなど古今東西の数学者たち、がどのような「なぜ?」から始まり、どのような発見へ至ったのか。その思考の軌跡を辿りながら、生徒の創造性を引き出す工夫や仕掛けを行う。

 この想いが最も実践的に表れるのが定期試験だ。毎回の試験の最終問題は入試問題同様、「見たことのない問題」を出してきた。これは習った通りに解く、という受け身的な学習ではなく、想定外の問いに向き合う力を養うためだ。授業で学んだ知識をフル活用し、創造的に問題へ対峙する経験を積み重ね、その反復の中で数学的な創造性が磨かれていく。試験結果より、その過程でどのような思考をしたのかが重要なのだ。

 こうした創造的な数学教育実践の中から、生徒の才能が次々と開花している。その象徴が都築高人さんの研究だ。その発端は、中学までの数学の『まとめのテスト』として中3生に出題した『3つの素数の積を分母とする数の和に関する法則に関する問題』だった。栗原教諭は、その法則を「栗原忍予測」として解答例に述べ、さらにフェルマー予測(数学史上最も有名な逸話)のごとく『*余白がないので、証明は略』と記した。いわば生徒への「挑戦状」だ。

 都築さんは「テスト中に問題の解法を直感しましたが、先生の解答例を見て違和感を覚えました。自分の解き方と違ったのです。自分の考えを証明するために数学の得意な友人2人の助言をもらいながら、放課後にそれを完成させて先生に見てもらいました」と述べている。その後、都築さんは栗原教諭と共に『都築・栗原の定理』として長崎大学教育学部初等数学論文コンテストに応募し、見事、審査員賞を受賞した。受賞後も都築さんは、定理をさらに拡張する研究を続け、それを発見。『既約分数の和の公式』として論文にまとめ、翌年も審査員賞を受賞した。栗原教諭は「最初は『都築・栗原の定理』でしたが、もはや『都築の定理』」と嬉しそうに語る。先生からの「挑戦状」に対し、主体的に興味を持って挑み、見事、結果を出した都築さん。桐朋が目指す創造的数学教育を象徴する瞬間だった。

 栗原教諭はさらに、このような創造的な学びの場を立ち上げた。それが、7時間目の特別講座だ。生徒たち自らが数学の問題を作成し、講座内で発表会を経て、冊子として文化祭で配布。参加者は自由意志で集まり、数学という共通の関心のもとで、未知の領域を共に開拓していく。さらには大学レベル以上の数学を扱う月刊誌『数学セミナー』の読者が自ら発見したアイデアや発見を共有するコーナーへの投稿も予定している。

 一人ひとりの生徒の可能性を信じ、それを引き出すための工夫が、栗原教諭の教育実践の根底にある。生徒の試行錯誤を見守り、時に示唆を与えることで、自律的な学習へと導いていく。教員と生徒という垣根を超えて、同じ数学に魅了された学習者として互いに成長するダイナミズムが、そこにはあるのだ。

創造的な数学の魅力と本質

 栗原教諭が最も強く抱く想いは、数学教員の仕事がいかに創造的で魅力的であるかを、社会に知らしめたいというものだ。また、同時に受験一辺倒ではない数学の世界があり、そこは無限の可能性が広がっていることを伝えたいという。

「渋滞学などの応用数学のように社会問題解決に数学を応用する分野から、中高の知識で定理を創造することの可能性まで、数学の道は無限に広がる。数学は決して過去の学問ではなく、現在進行形で進化し続けている学問。『習った通りにやって解けました』という経験だけで終わるのではなく、その先にある創造の喜び、未知の領域に果敢に挑む充実感を生徒に感じてほしい」と栗原教諭。これこそが、桐朋が世に送り出したい創造的数学力の本質なのだろう。

(文/松岡理恵)

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