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日本発のカップ麺、世界で愛され50年【ニュース知りたいんジャー】

お湯を注ぐと3分で完成するカップ麺が誕生して、2021年9月で50年を迎えます。

20世紀で最も偉大な発明といわれ、いまや世界中で食べられるようになったインスタントラーメンは、実は日本生まれ。誕生秘話などを知りたいんジャーが調査したんジャー!!【長尾真希子】


 ◇誰が発明したの?


 日清食品の創業者で、「インスタントラーメンの父」と呼ばれる安藤百福さん(2007年に96歳で死去)が発明しました。
 終戦後の食糧難の時代。安藤さんが空襲を避けるための疎開先から帰る道中、道ばたで飢えた子どもたちや餓死者らを見て「食が足りてこそ世が平和になる」と痛感。大阪駅前の市場で、ラーメンを食べる人たちの幸せそうな顔を見たことが、後の開発のきっかけになったと言います。
 理事長を務めていた信用組合の破綻で無一文になった安藤さんは、自宅でお湯があればすぐに食べられるラーメンの開発に取りかかりました。大阪府池田市の自宅裏庭に建てた小屋で1日平均4時間という短い睡眠時間で丸1年、1日も休まず研究を続けました。妻が天ぷらを作っている様子を見て、麺を油で揚げて乾燥させる「瞬間油熱乾燥法」を発明。1958年、安藤さんが48歳の時に世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を世の中に送り出しました。
 世界初のカップ麺「カップヌードル」は、視察に出かけたアメリカのスーパーマーケットで従業員がカップにチキンラーメンを割り入れてお湯を注いでフォークで食べていたのを見て、思いつきました。麺を型の中で均一に揚げる製法や耐熱性にすぐれた容器などを開発。1971年9月18日、安藤さんが61歳の時に「カップヌードル」が発売されました。


 ◇大量生産できるようになった「逆転の発想」って?


 安藤さんは、「ひらめきは、執念から生まれる」など数々の名言を残しており、「執念なき者には発明はない」という信念で研究を重ねてきました。そんな安藤さんが、「ヒントは日常に転がっている」と常にアンテナを張り巡らせていたことから思いついたのが、麺を容器の中央に入れ、宙づりにする方法です。
 容器は上が広く下が狭いため、麺を容器の底まで入れると、輸送中に麺が揺れ動いて壊れてしまいます。麺の直径を底部より大きくすれば、中央部に固定されて動きません。しかし、速いスピードで作る工場の生産ラインで麺をうまく宙づりにするのは簡単ではありませんでした。
 そんなある日、安藤さんが布団に横になっている時、天井がぐるっと回った錯覚に陥ったことからひらめきました。これが、揚げた麺の上に容器をかぶせて、それをひっくり返す「逆転の発想」です。確実に麺を容器に入れることができ、麺が容器の中で固定され壊れにくくなり、同時に容器の強度も補強され、工場での大量生産が可能になったそうです。


 ◇有名になったきっかけは?


 1972年2月、武装闘争による革命を掲げた連合赤軍が人質をとって立てこもる「浅間山荘事件」がありました。寒空の下、山荘を包囲する警察の機動隊員が湯気を立ち上らせながら「カップヌードル」を食べる様子がテレビ中継されたことがきっかけとなり、爆発的に売れ始めたといいます。しかし、これは、日清食品の営業担当者が、事件よりも前に、夜勤が多い警察署や消防署などにカップヌードルの売り込みを行っていたことが、功を奏したと言えます。他にも始まったばかりの東京・銀座の歩行者天国で販売し、1日に2万食が売れたそうです。
カップ麺の誕生は、日本の食文化を変えました。1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災などの被災地では、「救援物資」として重宝され、今では、「防災食」「備蓄食」としての新たな役割も果たしています。


 ◇海外でも人気なの?


 日本で誕生し、多くのメーカーが参入したインスタントラーメン(カップ麺と袋麺)は、2020年の1年間に全世界で1166億食が消費されました。
 カップヌードルは、現在、世界100か国以上で販売され、誕生してから今までの販売食数が500億食に達しています。
 カップ麺人気は、世界にとどまることなく、宇宙へも届きました。2005年には、安藤さんの長年の夢だった宇宙食ラーメン「スペース・ラム」を開発。無重力状態でもスープが飛び散らないようにとろみをつけ、麺を一口で食べられる大きさにするなど工夫をこらしました。野口聡一宇宙飛行士が国際宇宙ステーションで食べる姿が中継され、話題となりました。
 カップ麺は、いまや国民食から世界食、そして宇宙食へと広がっています。


 ◇オリジナルのカップヌードルが作れるってホント?

 インスタントラーメン発祥の地・大阪府池田市にある「カップヌードルミュージアム大阪池田」と神奈川県横浜市にある「カップヌードルミュージアム横浜」にある「マイカップヌードルファクトリー」で作ることができます。
 自分でデザインした容器に、4種類の中から好みのスープと、12種類の中から四つのトッピング具材を選ぶことができます。トッピング具材の中には、「大豆ビーフ」などの本日の特選具材のほか、「謎肉」やマスコットキャラクターの「ひよこちゃん」のイラストが描かれた「なると」などもあり、味の組み合わせは、計5460通りにのぼります。容器にフタをし、ぴったりとフィルムで包むシュリンク包装の工程も間近で見ることができます。1食400円(要事前予約)。記者は、毎小でおなじみの「なるほドリ」を描いた毎小ヌードルを作ってみましたよ。(2021年09月15日掲載毎日小学生新聞より)