【ニュースがわかる2024年10月号】巻頭特集は「発明が世界を変える」

経済を動かす 株の仕組み【ニュース知りたいんジャー】

ニュースでよく「株価が上がった、下がった」と言いますが、株が注目されるのはなぜでしょうか。経済の大もとにある株とは、どのような仕組みなのでしょうか。【黒崎亜弓】


◇株って何?


 会社が事業をするためにお金を集める方法の一つです。お金を出した人たちは、出した金額に合わせた数の株を受け取り、その会社の持ち主(株主)になります。株主たちは会社を経営する人を決めて、まかせます。会社の事業でもうけ(利益)が出ると、株の数によって分け前(配当)を受け取ります。事業がうまくいかず会社がつぶれると、株主が出したお金は戻ってきませんが、事業のために会社が借りたお金を株主が返す必要はありません。


 国税庁によると、日本の会社約273万社のうち、9割以上が株の仕組みで作られた株式会社です。


◇証券取引所は何をするところ?


 株を自由に売り買いする場です。株、つまり株式会社の持ち主の権利は、誰かに渡すことができます。証券取引所は株を売りたい人と買いたい人を結びつけています。売買の注文を取引所に取り次ぐのが証券会社です。


 証券取引所で売買されるのは、株式会社のうち、会社の大きさや情報公開の条件をクリアして上場した会社の株です。日本に上場会社は約3800社あります。上場していると、取引所で株を売り出してお金をもっと集めることができます。                                  ただ、株を買い集めて会社を思い通りに動かそうとする人が登場することもあります。会社の方針を決める株主総会の投票は、「1人1票」ではなく「1株1票」だからです。株をたくさん持っていると、会社への影響力が大きくなります。


◇株価が上がったり下がったりするのはなぜ?


 株が売り買いされた時の値段が株価です。その会社の株を買いたい人が多いと株価は上がり、売りたい人が多いと株価は下がります。
 株を買いたい人が増えるのは、たとえばその会社の商品がヒットした時です。もうけが増えて株主の分け前も増えそうだからです。株を持つ人は、買った時りも高く売ってもうけます。もっと高く売れるようになると思って株を買う人が増えます。
 反対に、商品の売れ行きが悪いと、株を売ろうとする人が増えます。もうけの分け前がないうえ、会社がつぶれれば株の価値はゼロになるからです。安い株価で買うのは、いずれ株価が上がると思う人です。株価が下がると、損が広がらないうちに売ろうとする人が増えます。


◇株が注目されるのはなぜ?


 株価の動きには、経済の様子が映し出されます。それに、株価の動きは経済に影響を与えます。景気が良くなっていく時には株価は全体的に上がります。商品の売れ行きが良くなるうえ、働く人の収入が増えて株を買おうとする人が増えるからです。株価が上がると、株を持っている人は自分の資産が増えた気分になってお金を使うので、景気が良くなります。

 反対に、景気が悪くなっていく時には株価が下がり、株価が下がると景気が悪くなります。株価全体の動きを見るために、それぞれの会社の株価から計算して一つの数字を出しているのが株価指数です。よく使われる指数が、日本を代表する上場会社225社の株価から計算した日経平均株価です。


◇取引所が止まると何が問題なの?


 2020年10月1日、東京証券取引所(東証)でコンピューターシステムが故障し、株の売買が丸1日止まりました。東証には3700社以上が上場し、1日に平均3兆円もの取引が行われています。人々はその日のニュースや世の中の動きをもとに株を売買しますが、10月1日は買うはずだったのに買えず、売るつもりが売れなかったのです。株を売ったお金をこの日に必要としていた人もいるでしょう。「取引所が突然止まるようでは信用できない」と日本の上場会社の株を売買するのをやめる人が出てくれば、株が売られます。(2020年11月04日掲載毎日小学生新聞より)