2025年 重大ニュース【月刊ニュースがわかる12月号】

日本の超深海探査 「うらしま8000」が挑む【ニュース知りたいんジャー】

くに研究けんきゅう機関きかん海洋研究開発機構かいようけんきゅうかいはつきこう(JAMSTECジャムステック)が開発かいはつした深海しんかい巡航じゅんこう探査機たんさき「うらしま8000」が、7がつ伊豆いず小笠原海溝おがさわらかいこう水深すいしん8015.8メートルに到達とうたつし、海底かいてい地形ちけいなどの調査ちょうさおこないました。日本にっぽん領海りょうかいと、経済けいざいてき権利けんりつとみとめられた排他的経済水域はいたてきけいざいすいいき(EEZ)をわせた面積めんせき世界せかい広大こうだいです。そのうち水深すいしん4000メートルよりふかいエリアがやく半分はんぶんめる「深海しんかい大国たいこく」でもあります。うらしま8000をどのように活用かつようし、ひろ深海しんかい調査ちょうさ開発かいはついどむのでしょうか。

 うらしま8000ってどんな探査機たんさきなの?

 元々もともと水深すいしん3500メートルきゅうの「うらしま」として活躍かつやくしていましたが、よりふかもぐれるよう2022ねんから改造かいぞうおこなわれました。

 深海しんかいでは、海底かいていから100メートルうえ航行こうこうしながら海底かいていけて音波おんぱはっし、はねかえってきた音波おんぱ測定そくていから、さまざまな観測かんそくおこないます。音波おんぱ反射はんしゃで、地形ちけい凹凸おうとつかたさ、海底かいていすうじゅう~100メートルほど内部ないぶ構造こうぞうかります。

 音波おんぱ反射はんしゃもちいた海底かいてい地形ちけい観測かんそくは、海面かいめんかぶ船舶せんぱくからでもできます。しかし、より海底かいていちかいうらしま8000は、海面かいめんからの観測かんそくくらべて100ばい解像度かいぞうどることができます。

 どうやって、どんな調査ちょうさをしているの?

 現在げんざい自分じぶん位置いちがわかる全地球測位ぜんちきゅうそくいシステム(GPS)の電波でんぱが、うみなかではとどきません。このため、ルートは事前じぜん設定せっていして航行こうこうします。海面かいめん母船ぼせん音波おんぱ通信つうしんでやりとりして自分じぶん位置いちなどを把握はあくし、加速度かそくどなどをつね測定そくていすることで、ルートじょうのどの位置いちにいるかをみずか判断はんだんしてすすみます。

 試験しけん航行こうこうかさね、今年ことしがつには日本にほん周辺しゅうへん海溝かいこうもっとふかいとされる小笠原海溝おがさわらかいこういどみました。

 また、希少きしょう鉱物資源こうぶつしげん「コバルトリッチクラスト」が豊富ほうふ存在そんざいすると期待きたいされる千葉県ちばけん房総半島ぼうそうはんとうおきにある拓洋たくようだい海山かいざん、2011ねんがつ発生はっせいした東日本大震災ひがしにほんだいしんさい震源しんげんいきである宮城県みやぎけんおき日本海溝にほんかいこうでも試験しけん観測かんそくおこないました。

海山の頂上付近を覆うコバルトリッチクラスト

調査ちょうさ研究けんきゅうかったことは?

 小笠原海溝おがさわらかいこうでは、それまでたいらだとおもわれていた海底かいていふかやく40メートルのたになどこまかな凹凸おうとつ連続れんぞくする地形ちけい鮮明せんめいかびがりました。海洋研究開発機構かいようけんきゅうかいはつきこうJAMSTECジャムステック)の富士原ふじわら敏也としや主任しゅにん研究員けんきゅういんは「こんなにこまかいデータがとれるんだというおどろきと、どう解釈かいしゃくしたらいいんだろうといううれしい戸惑とまどいで『⁉』というかんじでした」とかたります。

 富士原ふじわらさんの研究けんきゅうチームは日本海溝にほんかいこうそう距離きょり141.7キロメートル、25時間じかんはんおよ航行こうこうで、東京都江東区とうきょうとこうとうくとほぼおな面積めんせきやく41平方へいほうキロメートル)を調しらべました。

 東日本大震災ひがしにほんだいしんさい東側ひがしがわうごいた地盤じばんはし隆起りゅうきがること)したとみられる、落差らくさ最大さいだいやく60メートルのがけきたからみなみかってはしっていることや、その西側にしがわ落差らくさ30~50メートルほどのうねみぞがいくつもあることがかりました。

 地下ちか構造こうぞうをみると、しまじょう堆積たいせきそう所々ところどころでずれたりがったりしており、南北なんぼく東西とうざい網目あみめじょう複雑ふくざつ断層だんそうはしっていることがかりました。富士原ふじわらさんは「今後こんご詳細しょうさい解析かいせきし、どうやってこのような地形ちけいができたか解釈かいしゃくしていきたいです」といます。

 8000メートルよりふかうみもあるよね

 うらしま8000は水深すいしんやく8000メートルまでもぐれるので、日本にっぽんのEEZの98%をカバーできます。ただ、広範囲こうはんい海底かいてい観測かんそく得意とくい一方いっぽう海底かいていりて撮影さつえいしたり、つちものなどをかえったりすることはできません。そこで、目的もくてきふかさにわせたさまざまな探査たんさ開発かいはつすすめられています。

 地球ちきゅうもっとふかい、水深すいしんまん1000メートルの「フルデプス」とばれるエリアにいどむのは、海底かいてい設置せっちがた観測かんそく小型こがた自律じりつ探査たんさをセットにしたシステムです。観測機かんそくきだい容量ようりょう電源でんげんそなえて、定点観測ていてんかんそくふねとの通信つうしんにないます。すで水深すいしん9200メートルでの実験じっけん成功せいこうしました。

 小型こがた探査機たんさきは、2027ねんごろの運用うんよう開始かいし目指めざして開発中かいはつちゅうです。自動じどう水平すいへい移動いどうしながら海底かいていもの岩石がんせきなどを採取さいしゅすることを目指めざします。

 これからの課題かだいは?

 日本にっぽんでは、数々かずかず発見はっけんをもたらした有人ゆうじん潜水せんすい調査船ちょうさせん「しんかい6500」もられています。1989ねん建造けんぞう当時とうじ世界せかいちょう深海しんかい探査たんさをリードし、いま活躍かつやくつづけています。ただ、現在げんざい海外かいがい研究けんきゅう機関きかん民間企業みんかんきぎょうがよりふかもぐれるものを開発かいはつしています。

 しんかい6500は2040ねんだいにも設計せっけいじょう寿命じゅみょうむかえますが、コストや技術面ぎじゅつめんなどの課題かだいから後継こうけい具体ぐたいてき検討けんとうはされていません。まず現在げんざい機体きたい最大限さいだいげん活用かつようしながら、無人機むじんきふくめた多様たよう探査たんさ役割やくわり分担ぶんたんし、調査ちょうさ航海こうかい効率こうりつするかんがえです。

 各種かくしゅ探査たんさはこ母船ぼせん「よこすか」も、30ねんだい完成かんせい目指めざして新造しんぞうすることがまりました。複数ふくすう探査機たんさき同時どうじせ、運用うんようすることでやくばい効率化こうりつか見込みこまれています。

 日本にっぽん深海しんかいには、地震じしん津波つなみ海底火山かいていかざんなどに対応たいおうした防災ぼうさい課題かだい海洋かいようプラスチックによる汚染おせん実態じったい解明かいめいのほか、有用ゆうよう海底かいてい鉱物資源こうぶつしげん深海しんかい生物せいぶつ調査ちょうさなど、研究けんきゅうすべきことがたくさんあります。このため、さまざまな探査たんさ今後こんご活躍かつやく期待きたいされます。

(2025ねん10がつ29にち毎日小学生新聞まいにちしょうがくせいしんぶんより)

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