大阪・関西万博の準備に5年以上かかわってきたロバート キャンベルさんは、万博の魅力は「意外な出合いにある」と話します。(「Newsがわかる2025年7月号」より)

ロバート キャンベル:アメリカのニューヨーク市生まれ。日本文学の研究者。早稲田大学の特命教授で、「2025年日本国際博覧会協会」の理事をつとめる
経済や産業の力を競い合うこれまでの万博を再定義し、気候変動やパンデミックによって脅威にさらされている「いのち」にあらためて向き合いたかった。各パビリオンは抱きしめるようにこのテーマに取り組んでくれました。
例えば日本館。生命の起源ともいえる菌などの微生物に注目していのちを解き起こし、とても個性的でした。愛を象徴する赤い糸を使っていのちの重さを表現したフランス館も美しかった。
万博は大きな公民館のような場だと思っています。目的があって行くのだけれど、それとは別の「意外な出合い」こそ楽しい。
この前、会場を歩いていたらカタール館の前で男性が弦楽器をかなでていました。その音色と彼のたたずまいが想像力をかきたてました。美しいアゼルバイジャン館の前を通れば、この国はどこにあるのだろうと、思わず地図アプリを開いて調べたくなるでしょう。そんな出合いが醍醐味です。
いろいろな国の人たちが隣り合う万博会場は良い意味で「まぜまぜ」です。世界はいま、独立性、自立性が強調され、分断が深まっています。まぜまぜとは逆の方向に向かっているのです。
まだ万博は始まったばかり。これからこのまぜまぜはより豊かに、生命体のように成長していくでしょう。ぜひ何度か訪れ、読者の皆さんにはこの成長を見届けてもらいたいです。
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