2025年は「日韓基本条約」が結ばれて60年になります。お隣の国「韓国」とは、政治の世界では関係が良いとは限らない時期がしばしばありましたが、互いの文化交流やエンターテインメントの世界では、若い世代を中心に良い関係が続いています。近年は小中学生にも人気の高いK―POPの影響で、10~20代の韓国への渡航者数も急増中です。日韓関係の変化を、近年の韓流ブームからひもときます。
韓国エンターテインメントの世界で活躍中のライター・翻訳者の桑畑優香さんは、共著の「韓流ブーム」(ハヤカワ新書)の中で、「日本の韓流ブームは2003年以降、大きく分けて四つの波がある」と書いています。桑畑さんは、人気音楽グループ・BTS(防弾少年団)をテーマにした本などの翻訳を手がけています。
第1次韓流ブーム(03~10年ごろ)は、ドラマ「冬のソナタ」が始まりとされています。03年にNHK―BSで放送が始まり、翌年地上波で放送されると視聴率20%を超える大ヒットとなりました。主演したペ・ヨンジュンさんは「ヨン様」と呼ばれて人気となり、ブームを巻き起こしました。
その後、歴史ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」なども人気となるなど、ドラマや映画の影響で韓国料理やロケ地巡りを楽しむ韓国旅行などへ興味が広がっていったのが特徴です。ブームの中心は、当時40~60代の女性でした。

来日した韓国の俳優ペ・ヨンジュンさんに声援を送る女性ファンたち=千葉県の成田空港で2004年11月25日
第2次韓流ブーム(2010~12年ごろ)は、韓国の音楽「K―POP」がブームの中心でした(Kは韓国の英語表記、コリアの頭文字)。東方神起、BIGBANG、KARA、少女時代などのグループの日本進出が続き、人気は大人から女子高校生たちにも広がり始めます。
ところが12年8月、韓国の李明博大統領(当時)が、韓国に領有権があると主張する日本の領土「竹島」に上陸したことが影響し、ブームは終わります。
次の第3次韓流ブーム(17~19年ごろ)が始まったのは、その約5年後。第2次ブームに続き、10~20代の若者を中心に、インスタグラムなどの影響で女子中学生や小学生にも人気が広がっていきました。
BTSやTWICEなどのK―POPグループの人気に加え、興味の対象がファッションやメーク、スイーツなどへ広がりを見せたのも特徴です。女子中高生たちは韓国のメークやファッションをまねし始めます。

NHK紅白歌合戦のリハーサルで、取材に応じるTWICEのメンバー=東京・渋谷で2022年12月
第4次 韓流ブーム(2020年ごろから)は、新型コロナウイルスの流行中に始まりました。動画配信大手・ネットフリックスの加入者が急激に増え、「愛の不時着」「梨泰院クラス」「イカゲーム」などの韓国ドラマが世界中で大ヒット。幅広い世代の新しい韓流ファンが増えました。
また、K―POPの世界ではBTSが世界的な成功をおさめ、ブームを後押しします。ガールズグループのNewJeansも、世界中のあらゆる世代から注目されました。
この時期には韓国流のオーディション番組制作が相次ぎ、さまざまな国籍の混合グループが続々と登場しました。この傾向は今も続いています。
日本国内での韓流ブームと、日韓関係の変化は、日本から韓国を訪れる渡航者数にも大きく表れています。
渡航者数は2012年には350万人を超えました。しかし、同年8月の李明博大統領(当時)の竹島上陸で一気に冷え込み、15年には約184万人に減りました。
その後、第3次韓流ブームに後押しされ、若い世代の渡航者数が急増します。19年には、20代の渡航者数が92万人を突破しました。
新型コロナ禍(20~22年)には、渡航者数は激減しました。ただ、24年には20代の渡航者数が100万人を超え、他の世代を上回る勢いで回復しています。
日本政府観光局と出入国在留管理庁の統計によると、24年の日韓両国の相互の渡航者数は1200万人を超え(韓国から日本へ約881万人、日本から韓国へ約322万人)、過去最多を記録しました。
10代の人に、韓国に興味を持ったきっかけを聞いてみました。
小学2年生の頃にTWICEやBTSの曲を聴いてK―POPにはまったという鷹野有さん(12)は、お母さんの影響もあり、韓国の歴史ドラマも大好きな中学1年生です。現在は昨年デビューしたボーイズグループのNEXZのファンクラブに入り、ライブビューイングやライブへ行っているそうです。
中学3年の松尾由茉さん(14)は、小4のときにTWICEやNiziUからK-POPにはまり、現在の「推し」はIVEというガールズグループ。韓国語や韓国料理、コスメやファッションにも興味があります。小4から独学中の韓国語も、今は無料の言語教育アプリ「デュオリンゴ」を使って勉強中です。「ちょうど社会の授業で日韓併合を学んだところですが、政治(状況)は気にしない」と話します。
ライターの桑畑さんは、「エンタメから韓国が好きになった若い世代は、これから嫌いな部分が出てきたり、がっかりしたりするかもしれません。好きな部分と嫌いな部分を踏まえ、隣の国とどう付き合うかを考えるきっかけにしてほしいです。SNS(交流サイト)だけでは見えてこないですから、実際に足を運んでみることも大事ですね」とアドバイスをくれました。

世界最大のK-POPファン&アーティストフェスティバル「KCONJAPAN2025」のステージに声援を送るファンたち=千葉県の幕張メッセで5月10日
1965年6月22日に日本と大韓民国(韓国)との間で結ばれた条約です。同年12月18日に発効され、45年の第二次世界大戦後、正式な国交(外交関係)がなかった日本と韓国の国交が正常化しました。
韓国(当時は大韓帝国)は第二次世界大戦での日本の敗戦まで約35年間、日本の統治下に置かれていました。日韓基本条約によって、日韓併合条約(1910年)など、それ以前に結ばれた日本と大韓帝国との間の全ての条約や協定が無効であることも確認されました。日韓基本条約は、韓国の経済成長にも大きな影響を与えたといわれています。
一方、歴史問題などについては、現在でも両国間でさまざまな議論や考え方の違いがあり、日韓の政治でしばしば問題になっています。
(2025年6月18日 毎日小学生新聞より)
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