和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」で飼育されているジャイアントパンダ4頭が全て、6月28日に中国へ返還されることが決まりました。別れを惜しみ、全国からたくさんのファンが同園を訪れています。返還されると日本国内のパンダは東京の上野動物園にいる2頭だけになります。
アドベンチャーワールドから中国へ返還されるのは、良浜(24歳)、結浜(8歳)、彩浜(6歳)、楓浜(4歳)の4頭です。良浜がお母さんで、残り3頭はその娘たちです。
パンダは、日本と中国が共同で進めてきた保護・繁殖プロジェクトのために、中国が日本に貸し出しているものです。その返還期限が今年8月までのため、中国に返されることになりました。4頭とも日本生まれですが、日本で生まれたパンダも中国のものという約束になっています。パンダは暑さに弱いので、期限より2か月早く送り出します。
また、4頭ともメスのため、このままでは赤ちゃんが生まれません。中国へ返されるのは、パートナーを探すためでもあります。4頭とも四川省の成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地に送られます。

目と耳が丸い良浜。10頭を産み育てたベテランお母さん
アドベンチャーワールドでは、これまでに17頭の子どもが生まれています。うち16頭のお父さんが永明です。永明は1994年9月に白浜へ来て、2000年7月に来た梅梅との間に6頭の子どもをもうけました。その後は良浜とカップルになり、10頭の子どもがいます。梅梅は来日前に妊娠しており、白浜で良浜を産みました。
子どもはみんな名前に「浜」の字が付くことから、ファミリーは「浜家」と呼ばれて親しまれています。生まれた子どもたちは順に中国へ旅立ちました。永明も23年2月に帰国し、今年1月に32歳で死にました。
1972年10月、日本に初めてパンダが来ました。日本と中国の国交正常化を記念し、中国から贈られたカンカンとランランです。2頭が来た上野動物園は、2時間半待ちの大行列になりました。
上野ではその後、約50年間で計15頭を飼育しています。今いるのは2021年に上野で生まれた双子、シャオシャオとレイレイです。また、阪神大震災(1995年)で被災した兵庫県神戸市の市立王子動物園にもタンタン(2000年来日、24年に死ぬ)などがいました。
パンダは1984年から、野生の動植物を守るために国際的な取引を規制する「ワシントン条約」によって、学術研究の目的以外には輸出入できないことになりました。いま日本にいるパンダは、研究目的で中国から貸し出されたものです。
パンダは中国の四川省などの高い山で生息しています。野生パンダは約1900頭、飼育パンダは世界中で約700頭といわれています。
祖先は800万年前ごろに生息していたクマ科の動物です。260万年前の氷河期(地球全体の気候が寒くなった時期)で餌が少なくなり、だんだん高い山に移動して竹を食べるようになりました。200万年前ごろから、現在に近い生活になったと考えられています。このためパンダは「生きている化石」と言われています。主食の竹は、1日15~20キログラム食べるそうです。タケノコが大好物です。
ところで、パンダはなぜ白黒模様なのでしょうか。雪や竹林の中で目立たないようにするためとか、耳や足など冷えやすい所を黒くして太陽の熱を吸収しやすくするためとか、いくつかの説がありますが、はっきりしません。
白浜の4頭だけではなく、上野の2頭も2026年2月が返還期限です。このままでは日本からパンダがいなくなります。
パンダは人気が高く、観光や経済への影響も大きいため、日本の政治家は中国への働きかけを強めています。さまざまな政党の国会議員で作る「日中友好議員連盟」は4月末に中国を訪れ、新しいパンダを貸してほしいと要望しました。しかし、中国は今のところ、今後どうするか、はっきり答えていません。
中国の外交にくわしい東京女子大学の家永真幸教授は「中国はパンダ協力をやめるとは言っていません。日本でパンダが愛されていることは中国もよく知っていますから、前向きな政治的判断を期待したいですね」と言います。その上で「パンダは本来、中国の奥地にしかいない希少な動物です。パンダの将来のためにはどうするのが一番良いか、一緒に考えていくべきではないでしょうか」と話しています。
(2025年5月28日 毎日小学生新聞より)

中国返還をひかえるパンダを一目見ようと、連日多くの観客が訪れています=いずれも和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで19日
雑誌のご購入ご希望の方は「ブックサービス」まで

上のバナーをクリックすると「ブックサービス」につながります。