科学コミュニケーターの本田隆行さんと相棒のボットンが、日常のあちこちに潜む科学を探っていきます。今回はどうやって感じ取る? 「味覚」をナゾ解き!(「Newsがわかる2023年12月号」より)

じゃあ、まずはいろんなおいしいものの味を想像してみようか
サンマの塩焼きにステーキのほどよい塩加減、石焼き芋やアイスクリームは甘いよねえ。あとは、レモネードの酸っぱさもいいねえ。たまには苦めなビターチョコレートも食べたくなるし、あっさりおだしのきいたうどんやおでんも食べたい……グウ
さすがはボットン、すごいね! 今、出てきた塩味・甘み・酸味・苦み・うまみの五つは、「基本味」って言われてるんだ。口の中の舌で味を感じる「味らい」って場所で、人が感じている味の種類なんだよ

主に舌の表面にある味らいは、五つの味に対応するセンサーの役割をする細胞の集まり。味の刺激を味らいの味細胞で受け、味覚神経を通じて脳に伝わる
基本の味? じゃあ、カレーライスの辛い味はどうなるの? カレーもおいしいよ?
辛みや炭酸飲料のシュワッとした感じは、味ではなく“刺激”なんだ。だから度を越すと痛く感じるよね
確かに! ほどほどの刺激が、ボクは好きだなあ
でもね、それぞれの味がほどよいだけでは、「おいしい味」にはならないんだ
えーなんで? 舌でちゃんと感じているのに?
味には、「におい」や「見た目」もとても大事なんだよ。いい味付けができた料理も、鼻づまりの時に目を閉じて食べたら、なんの味がわからなくなっちゃう!

味覚のほかに、香り(嗅覚)や見た目(視覚)なども一緒になって脳に伝わり、私たちは「おいしい」とか、逆に「まずい」とかを感じることができる
やだー! おいしいものは、目で楽しんで、鼻で楽しんで、そして舌で楽しみたい!!!
そういえばさ、なんで大人には、苦いコーヒーとか、酸っぱいピクルスを、おいしく感じるって人が多いの?
お、鋭いねえ! 実は基本味ごとに、感じる度合いが違うんだ。中でも酸味と苦みに、人はとっても敏感なんだよ
そうなの?
うん。たとえば苦みって、もともとは「毒の味=危険」という意味合いが強くて、酸味も腐っているものに代表的な味なんだ。だから小さいうちは、体が「危ない味だ!」と反応してしまうのかも
そっか、ピーマンが苦手って感じる人が多いのも仕方ないんだなあ。でも大人は? 大人の体は頑丈だから、少々食べても大丈夫ってこと?
いやいや、害のないいろんなものを食べて味を覚えていくうちに「これは大丈夫な味だ」と、味を楽しめるようになっているんじゃないかな
ピーマンは、肉詰めにするとおいしいよねえ。ボクももっといろんな味を楽しめるようになるぞー!
そうだ、日本だとうまみが重宝されるけど、中華料理はスパイスが利いてるものがたくさんあるよね。アメリカには甘い味付けが好きな人が多かったりもする。国や地方の文化も「おいしい味」には重要なんだよね
そっか、ピーマンが苦手って感じる人が多いのも仕方ないんだなあ。でも大人は? 大人の体は頑丈だから、少々食べても大丈夫ってこと?
あとは食べる順番や食べる時の温度によっても、味の感じ方は変わってしまう。「おいしい味」ってのは、奥が深いねえ
あー! 考え込んでたら、冷たいソーダがぬるくなっちゃった。おいしくなーい!
イラスト:こばやし あさみ
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