スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は恵泉女学園中学校を紹介します。

発達段階に合わせた理科教育とキリスト教教育の連携で、科学の力が開花
<注目ポイント>
①園芸と連動する生物学習で、実物に触れ、観察する喜びを体験。
②ミニ学会形式の発表で、研究に向き合う姿勢と発信力を育む。
③サイエンス・アドベンチャーの研究が進路選択の基盤を作る。
生物のフィールドワークで基礎を学ぶ
1929年、ひとりのクリスチャン河井道が創立した恵泉女学園。聖書・国際・園芸を教育の柱に据え、主体性・多様性・協働性を育んでいる。人間的な成長に園芸を重視、「神の大地を汗して耕し、造り主の賜う命を育てることで鍛えられたものは、如何なる所でも神と人に喜ばれる」(河井)との信念が息づいている。
中1の理科は、この園芸と連動した生物からスタート。校内のビオトープなどで見られる約30種類の野草を調べる「校内野草調べ」は、生徒が実物に触れながら観察する絶好の機会だ。授業でまず、実験室に集められた野草を観察。その後、白地マップを片手に教室を飛び出し、見つけた野草の名前をメモしながら植生分布MAPを作成していく。この手作り感ある学習活動を通じて、植物がどのような環境で育つのか、その理由を考察する姿勢が育まれる。教科書で得た知識を確認しつつも、実際に見て、触れて、スケッチする体験が、科学的思考力を養う基盤となっていく。理科の金山達成教諭は「自然と理科を好きになってもらえるように、興味を持ちやすい内容にする意図がある」と語る。
この校内野草調べは、「かるた作り」へと発展する。グループごとに観察結果を発表した後、生徒は個別に図書館やネットを活用して、担当する植物について根拠のある知識を習得。その特徴や形状、生育環境などの情報を限られた文字数で表現し、かるたの「読み札」を創作する。例えば、植物名を明かさずに「暗いところに静かに佇む」「青い花びらが輝く」といった表現で、聞き手が植物を想像できるような工夫がされる。この過程で、生徒たちは知識を整理し、相手にわかりやすく伝える表現力を磨く。完成したかるたはゲームとして活用され、読み札を聞いて該当植物を取る。ゲームは複数回行われ、その中で植物についての知識が定着していく。

創立以来、生徒の個性を尊重し、生徒は自由服で登校
3年間の集大成・探究実験で研究手法を習得
中3の「探究実験」は、3年間の理科教育を集約した取り組みだ。全理科教員が関わり、通常の授業では扱わない、物理・化学・生物・地学の4分野を横断するテーマが提示される。生徒はグループ毎に、興味のあるテーマを選択。放射線、プラナリア、植物ホルモン、メントスコーラ、炎色反応など、深掘りできるテーマが用意されている。その後、各自が事前学習を行い、具体的な実験内容を自分たちで企画する。「例えば、メントスコーラは一見、楽しそうな実験ですが、何を測るべきか、そこから何が導き出されるかといった深い思考が必要です」と金山教諭。
実験終了後は、各グループが7、8分でプレゼンを行い、その後2、3分の質疑応答が続く。複数の理科教員の前で行われるこの学会形式の発表では、生徒たちは様々な角度からの質問に備える。スライドを工夫し、想定問答を用意する過程で、科学的思考力だけでなく、発信力や表現力が育まれる。生徒からは「これまでは与えられた実験をなぞっていた感があったが、探究実験は自分たちで考えられた」という声が聞かれ、学習の質が大きく変化することが明白だ。
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