世界の人たちと生きる これからの日本【月刊ニュースがわかる11月号】

あくびはなぜうつる? 【疑問氷解】

Q なぜ近くの人があくびをすると、自分もしてしまうの?(大阪府枚方市、小5)

Q あくびをすると、なぜ涙も出るの?(兵庫県神戸市、小3)

頭冷やし身を守る行動を仲間で共有

  A 眠い時や退屈な時、疲れている時にはあくびが出ますよね。家族や友達があくびをしていると、つられて自分もしてしまう時があります。悲しくないのに、一緒に涙が出ることもあります。あくびなどの研究をしている医療創生大学(福島県いわき市)心理学部の教授、大原貴弘さんに理由を聞きました。

  あくびでは、大きく口を開けながらゆっくり深呼吸をします。同時に目をつむったり細めたり、上半身をストレッチのように伸ばしたりする場合もあります。

  あくびは何のために出るのでしょうか。大原さんによると、実ははっきりと分かっていないこともあり、「あくびをすることで冷たい空気を取り込み、脳を冷やして目覚めさせている、という説が有力です」と話します。眠い時や退屈な時は、脳の活動が低下しているので、あくびで脳を刺激しているのです。一部の実験では、あくびは頭を冷やすと出にくかったり、寒い外から暖かい部屋に入った時に出やすかったりすることも確認されています。

 あくびをすると涙が出ることもあります。あくびと一緒に目をつむったり細めたりして、目と鼻の間にある、涙をためる袋(涙のう)が圧迫されて涙が出るのだそうです。  

 では、なぜあくびは「うつる」のでしょうか。大原さんは「他人への共感や関心が関係しているのではないか」と話します。

 人が泣いていると、つられて泣いてしまう「もらい泣き」など、私たちは相手の行動に影響されて、同じような行動をとってしまうことがあります。大原さんは、人間が進化してきた過程で、他人が振り向いたら自分も振り向くなど、同じ行動をとった人の方が生き残りやすかったためと考えています。あくびがうつるのも、行動をまねするうちの一つだといいます。  

 大原さんの研究では、人と関わるのが好きな社交的な人や、他人への関心が高い人の方があくびがうつりやすいことが分かっています。特に、知らない人より家族や友達など親しい人のあくびの方がうつりやすいといいます。また、他の実験では、あくびを見るだけでなく、あくびの音を聞いたり、あくびについての文章を読んだりしても、あくびがうつることが分かっているそうです。

  さらに、人のあくびが、飼っているイヌにうつることもあります。あくびは、哺乳類や魚類などの脊椎動物もしますが、チンパンジーやオオカミなど一部の動物では、仲間(同じ集団)の中であくびの伝染が確認されているそうです。大原さんは「油断している時に、外敵から身を守るためにあくびをして、脳をはっきりさせる。あくびがうつるのは、集団の中で目覚めた状態を共有する働きもあるのではないか」と指摘します。 【毎日小学生新聞編集部】
(毎日小学生新聞2023年2月6日掲載)

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