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年賀状いまむかし 15日から受け付け【ニュース知りたいんジャー】

今年も年賀状の受け付けが15日から始まりました。日本では、新年のあいさつである年賀状のやりとりが大切にされてきました。いつからこのような習慣が根付き、どう変わってきたのでしょうか。【田村彰子】

◇年賀状はいつからあるの?


 年賀状の習慣が成り立つには、年月の単位である暦、紙や文字が使われていることが条件になります。その書状を届ける通信手段も必要です。
 いつから年賀の手紙を交わすようになったのかは明らかではありませんが、少なくとも平安時代後期の11世紀中ごろになると、日本人による最初の手紙の文例集が作られました。その中には、年始のあいさつの例文もありました。貴族の間で年賀の手紙が交わされていたようです。
 江戸時代になると寺子屋が広がり、読み書きができる人も増えました。さらに、江戸時代後期には民間の飛脚制度も発達して、料金を払えば私用の書状も送れるようになります。そのころには、庶民の間でも身近な存在になっていたとみられます。
 現在、年賀状は松の内(1月7日まで、地域によっては15日まで)を過ぎたら送らないのがマナーとされています。しかし、江戸時代などはもう少し期間の幅があったようです。

◇現在の「年賀はがき」になったのはいつ?

 明治維新によって郵便事業がスタートし、1873(明治6)年に郵便はがきの発行が始まりました。最初のはがきの形式は、二つ折りでした。料金も安く、発行後まもなく年賀状に使われました。
 年末に年賀状の投函が集中したため、1899(明治32)年12月、一部の郵便局で年賀はがきの特別取り扱いを始めました。12月20日から30日までに出された年賀はがきは、翌年1月1日の日付が押され、新年に優先的に配達される仕組みです。これが、現在の年賀状特別取り扱いのもとになっています。
 現在は、12月15日から28日までの間に郵便ポストの年賀はがき専用投入口に投函すれば、元日の朝以降に配達されます。郵便局では、元日に届けるためには25日までに宛名を正確に書いて出してほしいと呼びかけています。

◇年賀はがきに、賞品があたるくじがついているね

 明治時代から昭和の初期にかけて、年賀状を特別に取り扱う制度も定着しました。しかし、第二次世界大戦が始まると、物不足などの影響で年賀はがきを出すことが抑えられました。戦争が激しくなった1940(昭和15)年には、年賀特別取り扱い制度も停止されました。
 制度の復活は、終戦後まもなくの48年です。その翌年、お年玉くじつきの年賀はがきの発行が始まりました。発案者は、大阪で雑貨の会社を営んでいた林正治さんです。お年玉くじの賞品案を持って郵政省に提案し、寄付金付きのはがきも実現させました。林さんは「戦争で散り散りになった人同士に年賀状を復活させ、社会福祉にも役立てたい」と考えたそうです。

◇年賀状を出す人は減っているの?

 戦後、年賀はがきの発行枚数は増え続けました。過去最高は、2004年用(03年度発行)で、44億5936万枚です。
 しかし、初めに発行される枚数は今年まで11年連続で減少し、昨年(21年用)は19億4198万枚でした。この減少幅は約17%で過去最大でした。今年発行された22年用の初めの枚数は、18億2536万枚です。販売状況に合わせ、追加されます。
 減っている原因は、携帯電話やインターネットの普及でメールや無料通信アプリでのメッセージ交換が簡単になったことや、人口減少などが考えられています。日本だけではなく、多くの国で新年を祝う手紙の交換は少なくなってきているそうです。

◇年賀状は日本だけの風習?

 日本以外にも、新年を祝うための手紙、はがきのやりとりをする習慣はあります。キリスト教を信仰する地域だと、クリスマスカードが主流で、それに新年のお祝いが添えられる形が多いそうです。宗教や文化によっては、1月1日をあまり重要としない地域もあります。
 年賀切手の発行は外国でも昔からあり、南アメリカのパラグアイでは「新年を賀す」と文字を刷り込んだ切手を1932年に発行しています。東南アジアや東アジアの国々は、中国の影響を受けて年賀切手に十二支がよく使われています。
 また、1年の始まりを決める暦は、それぞれの地域によって違います。ペルシャ暦では、春に年始があるのでイランは3月ごろ、ユダヤ暦のイスラエルでは8~9月ごろに新年用切手が発行されるそうです。

(2021年12月15日掲載毎日小学生新聞より)