ミネラルの濃度の差
8月1日は「水の日」です。水道の水を飲むことができる数少ない国である日本で、水の消費量が増えるこの時期に水の大切さや水資源開発の重要性に関心をもってもらおうと国が定めました。
ところで、ミネラルウオーターのペットボトルのパッケージには、「硬度」が表示されているのにお気づきですか。
「天然水 南アルプス」(サントリー) 硬度:約30mg/L
「天然水 北アルプス」(サントリー) 硬度:約10mg/L
「い・ろ・は・す 日本の天然水」
採水地:白州(山梨県) 硬度:27mg/L
採水地:阿蘇(熊本県) 硬度:71.1mg/L
「クリスタル・ガイザー」 硬度:38mg/L
「コントレックス」 硬度:約1468mg/L
人の体を維持するためには、ミネラルと呼ばれる栄養素をとることが必要です。そのミネラルであるカルシウムやマグネシウムが水に含まれる量を炭酸カルシウムの濃度で換算したものが、水の硬度です。硬度が高い水を「硬水」、低い水を「軟水」といいます。日本ミネラルウォーター協会によると、「硬水」と「軟水」を分ける統一的な基準はなく、日本ではその境を100mg/Lとしている場合が多いとのことです。
硬度が高いとせっけんの泡立ちが悪くなるため、日本では水道水の水質基準として、硬度300mg/L(1リットルの水に炭酸カルシウムとして300ミリグラム)以下とするように定められています。硬度が高いと、やかんの口などに白いものが付く可能性が高くなります。
利根川が影響か
水の硬度はそもそも何によるものなのでしょうか。
水道水は川の水や地下水を浄水した上で流しますが、日本水道協会の調べでは、地下水がもとになっている水道水のほうが、川から取った水がもとの水道水より硬度が高い傾向にありました。地下水には、地中のミネラルが時間をかけて溶け出しているからだと考えられています。
川由来の水道水の硬度は、地質や川の長さが影響しているようです。
東京大学教養学部特任助教の堀まゆみさんらの研究グループは、日本各地の水道水の硬度分布を初めて「見える化」しました。2017年から2024年にかけて、全国47都道府県1564地点の水道水を集めて硬度を測り、都道府県ごとの硬度を表したのが下の「日本の水道水の都道府県別硬度分布」です。赤っぽいほど硬度が高く、青っぽいほど硬度が低いことを示しています。

出典:「日本の水の個性を解析 ――全国の水道水質一斉調査――」
図は堀まゆみ(東京大学特任助教)さん提供
全体の平均値は50.5mg/Lでしたが、地域によって幅がありました。硬度が高かったのは関東地方。千葉県97.4mg/L、埼玉県81.7mg/L、東京都66.0mg/Lでした。この地域の多くでは、利根川の下流でくみ上げた水を浄水して水道水にしています。利根川は信濃川に次いで国内で2番目に長いことから、研究グループは「源流から取水口までの距離が長く、時間をかけて地中のミネラルが溶け出していることや、さらに川にさまざまな排水が流れ込んでいる影響があるのではないか」と分析しています。
このほか、地下水からくみ上げている熊本県や、カルシウムが主成分の琉球石灰岩に覆われている沖縄県の水道水も、硬度が高い傾向にありました。
香りや味をより引き出すのは軟水
水の硬度は、おいしさにはどう影響するのでしょうか。
国が設立した「おいしい水研究会」が示した「おいしい水の水質要件」は「10~100mg/L」です。
日本ミネラルウォーター協会によると、軟水のほうが食べ物の香りや味を引き出す力が大きく、「お米の香りを味わいたい場合や、出し汁をとるには、軟水を使ったほうが効果が高い。一方、肉料理には肉の臭みを出しにくい硬水が向いている」としています。
【ニュースがわかるオンライン編集部】