大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

どうして虫は明るいところに集まるの? 【疑問氷解】

Q どうして虫は明るいところに集まるのですか。(愛知県、小3)

紫外線に集まる虫 太陽、月と勘違い?

 A 夏の夜の街灯の明かりに虫が集まっている様子などを見て、不思議に思ったのだと思います。このように虫が光に対して反応することを「光応答反応」といいます。この反応を利用して、農作物に対して害虫が悪さをしないような資材を販売している「セイコーステラ エコロジア事業部」(東京都府中市)の小島英幹さんに聞きました。

 光応答反応の中でも虫を引き寄せることを「正の走光性」、逆に寄せ付けないことを「負の走光性」といいます。この正の走光性によって、街灯の明かりに虫が寄っていきます。

 なぜ明かりに集まるのかということについては、有力な説がいくつかありますが、はっきりと分かっていないそうです。虫は多くの種類があり、全ての虫が光に集まるわけではありません。メスとオスで違うこともあれば、生後何日目かで違うこともあります。

 多くの夜活動する虫に当てはまるとされているのは、「紫外線に集まる」という習性です。多くの虫は、特定の波長の紫外線に引きつけられるということが分かっています。太陽だけではなく、月の明かりにも紫外線が含まれています。

 さらに蛍光灯には紫外線が含まれていて、それを利用して虫を集める「誘蛾灯」と呼ばれる電灯もあります。省エネのために最近よく利用されているLED(発光ダイオード)には紫外線を含まないものもあるため、虫が寄ってこないことがあります。

 「街灯の明かりを太陽や月と勘違いしている」というのも有力な説です。ガのように太陽や月を基準に飛ぶ方向を決めている夜行性の虫が、街灯をそれと間違えて飛んでくることを「コンパス理論」と言います。光を中心に、ぐるぐると回って飛んでくるように見えるのです。

 自然界では通常、夜に一番明るく光っているのは月です。ガなどは、月の明かりを頼りに飛ぶ方向や高さなどを保っています。ところが、現代は月以外に街灯の明かりなどがあります。それらは月と違って距離が近いため、一定の角度で近寄ろうとするとぐるぐると回ってしまうとされています。

 昔はたいまつでおびき寄せ、虫を焼いて農作物への被害を防ぐこともあったそうです。「飛んで火に入る夏の虫」という、ことわざのできた理由の一つにもなっていると思われます。

 「こうした虫たちの光に対するさまざまな反応を利用して、光だけで虫をよける方法の研究が続けられています」と小島さんは話しています。【毎日小学生新聞編集部・田村彰子】

(毎日小学生新聞2022年1月25日掲載)

収穫期を迎え、夜には防蛾灯の明かりが広がる奥谷梨生産組合のナシ園=石川県加賀市で2022年9月、滝川大貴撮影