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【ニュースがわかる2024年6月号】巻頭特集は地震大国ニッポン 被害を減らすために

注目集まる、コメ【ニュース知りたいんジャー】

日本の食事に欠かせないコメ。実は最近、国内外で注目が集まっています。海外では日本食の人気が高まり、輸出が増え続けています。国内では需要は減りつつあるものの、おにぎりがブームに。一方、地球温暖化によってコメの質の低下が心配されています。コメをめぐる話題を調べました。【野田武】


 ◇いつごろ日本へ来たの?


 コメを実らせるイネは、もともとは中国南部から東南アジアにかけて広がる山岳地帯の植物といわれています。稲作は3000年ほど前に、日本に伝わったとされます。
 日本では、コメは穀物の中でも特別な地位を占めてきました。例えば、現代では国の経済の大きさはお金で表し、給料などはお金で払われますが、江戸時代にはコメが主にその役割を担っていました。各地の藩の規模を表す「○万石」や、武士の給料の「○石取り」などというときの「石」はコメの単位で、1石はだいたい150㌔㌘に相当します。
 なお、コメには大きく分けて、ジャポニカ種、インディカ種、ジャバニカ種の3種類があります。ジャポニカ種は日本でよく食べられているもので、粒の形が丸くて短く、炊くとねばりとつやが出ます。
 世界で最も多く食べられているのはインディカ種です。粒の形が細長く、炊くとパラパラした感じになります。ジャバニカ種は、インドネシアや中南部アメリカなどで作られています。


 ◇おにぎりがブーム?


 コンビニエンスストアなどで販売されるおにぎりの種類が増え、おにぎり専門店の出店や、他業種からの新規参入が増えています。新型コロナウイルスの流行が転機となりました。
 もともとおにぎりは、1個100円程度で手ごろな「ツナマヨ」などが中心でした。そんな中、新型コロナの流行で、外食の売り上げが落ち、家庭外で調理された食品を家で食べる「中食」需要が高まりました。そこで、サケの切り身やイクラなどの高級食材を具材に入れた、単価(1個の値段)の高い「ごちそうおにぎり」が消費者のニーズをつかんだのです。
 また、新規参入が増えたのには理由があります。1個100円程度のおにぎりで利益をあげるためには、大量生産の仕組みが必要です。これでは具材や資材の大量購入が可能なコンビニエンスストアや流通大手の会社しか生き残れません。単価の高いおにぎりが消費者に受け入れられた結果、個性を重視する専門店の経営の自由度が高まり、新規参入がしやすくなったのです。


 ◇輸出が増えている?


 農林水産省によると、2014年に4516㌧だった国産米の輸出量は、22年に2万8928㌧になりました。8年で6倍強の大きな伸びとなっています。国内のコメ需要がここ数年、年平均で約10万㌧ずつ減っているのとは対照的です。
 干ばつの影響でアメリカ産のコメが不作になったことなども影響していますが、農水省は「日系スーパーや日本食レストランチェーン、おにぎり店などの需要開拓を進めた結果」と分析しています。
 海外では、おにぎりが、ピザやサンドイッチといったテークアウト用の新たなメニューとして注目されています。ロシアによるウクライナ侵攻を背景に小麦などの価格が高騰する中、おにぎりは材料がシンプルで、コストパフォーマンスが良い和食と見られています。


 ◇パンを食べる人も多いよね

 農林水産省によると、国内で主食用のコメは、約670万㌧生産されています。都道府県別では、最も多いのは新潟で、北海道、秋田が続きます。東北・北海道がコメどころになった背景には、品種改良、寒い地域でも作れるようになったことと、昼と夜の気温差が大きくイネの生育に適していることが挙げられます。
 一方、国内のコメの消費量は、1962年度の1人あたり年間約118㌔㌘をピークに減り続け、現在は半分以下の約51㌔㌘(2020年度)です。60年代には生産量が1400万㌧を超える年もありましたが、消費量が減るにつれ生産量も減る傾向を強めました。
 消費量が減った理由として、食生活の洋風化や多様化が挙げられます。昔よりも、主食にパンやめんを食べる機会が増えました。1人暮らしや夫婦共働きの世帯が増え、「コメを炊く時間がない」「研ぐのがめんどう」などと手軽なパンやめんを選ぶ傾向もあります。生まれる子どもの数が減る「少子化」で、食べ盛りの年代が少なくなったことも影響しているとみられます。


 ◇温暖化で良いコメ減った?


 2023年に作られたコメの色や形などの品質について農林水産省が調べたところ、高値で売り買いされる質のよい1等米の割合は全国平均で59・6%でした。これは今の検査制度が始まった04年以降の最終値と比べて過去最低です。
 今年は猛暑による高温に加えて水不足にも見舞われ、主な産地の新潟県では1等米の割合が13・5%と、前の年の同じ時期と比べて60・9㌽低い結果でした。他にも神奈川、山形、秋田、富山、青森、福島など11県で10㌽以上下がりました。地球温暖化の影響で、今年のような猛暑は今後も増えると考えられています。
 コメは、穂が出てから約2週間の平均気温が26~27度以上になると、でんぷんが少なくなるため白く濁って見える「白未熟粒」が増えます。この白未熟粒が、今年は広い範囲で確認され、1等米が減りました。
 等級が下がり価格が安くなると、農家に入るお金が減ってしまいます。

(2023年12月20日毎日小学生新聞より)