大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

なめこはどうしてぬるぬるしているの? 【疑問氷解】

Q どうしてなめこはぬるぬるしてるの?(東京都、小4)

きのこの生存戦略 保湿…未解明多く

 A:スーパーの野菜売り場に売られていることが多いですが、きのこは野菜ではなくカビなどと同じ菌類です。なめこのぬるぬる成分について、東京農業大学の江口文陽学長に聞きました。

 ぬるぬるの正体は「粘性多糖体」と言い糖類の一種です。糖質とたんぱく質が結びついたオクラなどにあるムチレージに近い物質や、ペクチン、たんぱく質などが合わさってできています。ペクチンはジャムをゲル状にする時にも使われるので聞いたことがあるかもしれません。植物にも存在し、細胞壁の成分の一つです。木の枝が風で揺れても折れないのは、ペクチンなどによって弾力が生まれ、枝がしなるようになっているからです。

 なめこがぬるぬるしている理由を、国立科学博物館できのこを研究する、保坂健太郎さんに聞きました。

 きのこには、なめこに限らずぬるぬるしたものが多くあると保坂さんは言います。例えばヌメリイグチ科というグループのアミタケやハナイグチ、スッポンタケ目のスッポンタケの仲間、モエギタケ科のヌメリスギタケモドキはぬるぬるしたかさを持ちます。

 きのことして食べる部分は、子実体と呼ばれ、果物や花にあたる部分です。本体は地下にある菌糸と呼ばれる部分で、目に見えないほど小さい、糸のような形をしています。きのことして目に見える時期はわずかで、大半の時は微生物として存在するので目に見えません。この子実体が成長する時に、たくさんの水を必要とします。そのため、このぬるぬる成分には、水分を保って乾燥を防ぐ役割があるのではないかと保坂さんは指摘します。

 また、分厚いぬるぬるの層でかさを覆うことで、小バエなどの小さい昆虫がかさの肉までたどり着けず、食べられることを防いでいるのかもしれません。

 考えられるのは主にこの二つですが、はっきりとした理由はまだ分かっていません。ただ、ぬめりを持つ代表的なきのこのグループは、互いに近い関係にはないので、ぬるぬるは何回も進化してきたのかもしれないそうです。つまりぬるぬるは、きのこの生存戦略として重要だったのではないかと考えられると保坂さんは言(い)います。

 現在名前のついているきのこは2万種類ほどあり、全世界で毎年何百種類もの新種が発表されているそうですが、それでもまだ発見されていないものの方が多く、10万種をはるかに超えると言われているそうです。

 ぬるぬるの理由だけでなく、きのこに関して解明されていないことはたくさんあるそうです。【毎日小学生新聞編集部・田嶋夏希】

(毎日小学生新聞2022年1月16日掲載) A 

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文部科学省の日本食品標準成分表をもとにしたデータベース。食品の名前を入力すると、エネルギーや栄養成分の量がわかります

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