「戦後80年企画」80年前の子どもたち【ニュースがわかる8月号】

スクールエコノミスト2025 WEB【女子学院中学校編】

自分を表現する、競争のない勉強

 自由を探求する学校の姿勢は、美術の授業にも反映されている。「美術は、『競争のない勉強』。『自分のことを表現する』だけで成り立つ世界があることを生徒に伝えるのが、美術教育の狙い」だと語るのは、美術科の宮良教諭。荒木教諭も、「自分の作品を見て、感動してくれる人がいることを経験してほしい。大切なのは上手・下手ではなく、『誰がどういう思いで作ったのか』。まずは自分で自由に表現し、次に友人の作った作品も鑑賞してみる。こうした体験を重ねると感受性が豊かになり、友人たちの作品に感動できるようになる」と続ける。

 自由な発想と創造性が育まれる様子は、高1の木彫の授業からも伺える。テーマは「マスク(顔面)」だが、生徒たちはこのテーマを自由に解釈し、顔以外にもリンゴや砂時計など実に多様な作品を制作するという。

 「教員が与えるテーマは、創作活動のきっかけになればいい。自由に楽しむことを第一に考えているので、作品完成後に全作品を並べて出来・不出来の講評も行わない方針」と、宮良教諭。その一方で、「作品を通して生徒の内面を理解し、一人ひとりに声を掛け、良い方向に導くのが教員の務めだ」とも語る。

 また、高2の選択授業の美術では、前期に「デザイン演習」を、後期には「自由課題」に取り組む。デザイン演習は「DIY」というシリーズ名を冠しているが、「ここで言うDIYは、DESIGN IT YORSELF。まずはチャレンジしてみようという趣旨」だと荒木教諭は説明する。

 昨年度は児童文学作家の岩佐めぐみ氏をアドバイザーに迎え、幼稚園児に読み聞かせるための絵本を制作した。最初に行ったのは、グループで1冊の本を分担して読み、内容を発表するというチームビルディング。その後、各自で物語のプロットを構想し絵本制作へ。完成後には幼稚園を訪れ、読み聞かせも体験した。「園児から『読み聞かせしてくれたお姉さんたちに』と、折り紙のプレゼントをもらう場面もあった。生徒たちは表現がもたらす豊かなコミュニケーションを体感し、充実感を味わったようだ」と荒木教諭は微笑む。

高2美術の「絵本の読み聞かせ」実習の様子

 続く後期の自由課題では、導入に、生徒たちのモチベーションを高める時間を設けるという。例年、これまでの人生を振り返る時間を作ったり、個別のカウンセリングを行ったりしているが、2024年度は、自由な創作活動を展開して社会的な注目を集めた福祉作業所のドキュメンタリー映像を鑑賞した。「各自が『本当は何を表現したいのか』を自分自身に問い、じっくり考えるきっかけになったのではないか」と荒木教諭は手応えを語る。

 表現とは、個の自由を解放することから始まる。「個の尊重」「他者への理解」を深めるキリスト教教育とともに、女子学院の大切な学びだといえるだろう。

(文/佐藤理子)

所在地       〒102-0082 東京都千代田区一番町22-10

TEL         03-3263-1711

学校公式サイト   https://www.joshigakuin.ed.jp

海外進学支援    

帰国生入試     

アクセス

麹町駅(東京メトロ有楽町線)徒歩3分

半蔵門駅(東京メトロ半蔵門線)徒歩6分

市ヶ谷駅(JR中央線、都営新宿線、東京メトロ南北線)徒歩8分

四ッ谷駅(JR中央線、東京メトロ南北線・丸ノ内線)徒歩13分

国内外大学合格実績(過去3年間)

東京、京都、東京科学、一橋、北海道、東北、大阪、東京農工、東京外国語、東京藝術、お茶の水女子、筑波、防衛医科、慶應義塾、早稲田、日本医科、順天堂(医)、東京慈恵会医科、コロンビア、ペンシルベニア、スミスなど