楽しみながら続ける 防災アクション10【ニュースがわかる9月号】

スクールエコノミスト2025 WEB【桐朋女子中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は桐朋女子中学校を紹介します。

卒業生は国連職員や外資系企業トップも!人の心を動かす表現力に踏み込む学び

<注目ポイント>

①中学の「論理エンジン」で国語の基礎を習得。

②新聞投稿やディベートで表現力を磨く「国語表現」。

③高1「言語文化」と高2「文学国語」で深い読解力を培う。

中学で論理的表現力の基礎を習得

 戦後、旧東京教育大学出身者らが目指した先進教育の精神を継承し続けている桐朋女子中学校。同校が今、特に力を入れているのが豊かな表現力を育む国語教育だ。

 「国語は才能やセンスの問題」という誤解を払拭し、論理的な思考力と表現力の基礎を養うため、中学では教科書『論理エンジン』(水王舎)を使用する。中1では語と語のつながり、中2では文と文のつながり、中3では文章と文章のつながりと、段階的に学習を深めていく。「言葉と言葉のつながりを見直すことで、私たちが普段何気なく使っている日本語が、実は論理的に成り立っているということを学びます」と国語科の千坂美樹教諭は語る。

様々な“ 表現”に活用されるポロニアホール

人の心に響く表現を学ぶ「国語表現」

 高校に進むと「国語表現」で自分の意見や思いを作文やディベートなど様々な学習手法によって「伝える力」の育成を目指す。

 ユニークなのは、作文授業で新聞の読者投稿欄に応募する文章を作る時間も設けていること。教員が生徒に与えるテーマは「春」「締切」「可愛い」など多岐にわたり、制限時間内で自分の考えをまとめ、書く訓練を重ねていく。その結果、当初45分かかっていた作文が、学年末には20分で書けるようになる。さらに日常生活の様々な出来事にも関心が広がっていくという。

 「作文では、人の心に響く表現力を養うことが大事です」と国語科の布施雄一朗教諭は語る。「単なる出来事や感情を記録しただけの文章は、日記に過ぎません。その経験が自分にとってどういう価値をもたらす出来事だったのかまで掘り下げてこそ、人の心に響く文章になるのです」。その言葉通り、新聞のエッセイ欄に採用された生徒の作品を見ると、個人的な体験から普遍的な教訓を導き出したものや、登場する人物の心情や行動を丁寧に描写したものが多いという。「文章の中に人が描かれていると、より読み手の心に響きます。何があったかではなく、その出来事で人がどう変わったかを描くことが大切なのです」。

 ディベートの授業では「お客様は神様か否か」「未成年犯罪者の実名報道の是非」といったテーマで議論を交わす。相手の人格を否定せず、根拠をもとに議論を深めていくルールを徹底している。生徒たちは立論の準備段階で、図書館で資料を集め、チームでミーティングを重ねる。本番では、立論→質疑応答→反駁と進み、すべての生徒が必ず発言する機会を設けている。勝敗の判定は生徒たち自身が行い、「元々どちらの意見だったか」「議論を聞いてどちらに分があると感じたか」を理由とともに書かせる。こうした活動を通じて、生徒たちは次第に、答えが一つに定まらない問いについて考えることを楽しむようになり、自分なりの視点で世界を捉える目が育まれる。