Q どうしてマッチに火がつくの?(神奈川県横浜市、小4)
摩擦で薬品が燃え、マッチ棒の先が発火
A マッチは、細く短い木の棒の先に薬品(頭薬)がついていて、マッチ箱の側面の茶色い紙をすると火がつきます。頭薬の成分は、塩素酸カリウム、硫黄、松ヤニ、にかわ、ガラス粉などです。マッチ箱の側面のざらざらした茶色い紙にも薬品(側薬)がついています。側薬の成分は、赤リン、硫化アンチモンなどです。
日本燐寸工業会(兵庫県神戸市)の山下和也さんに聞きました。「頭薬を側薬にすりつけることによって摩擦で側薬の赤リンが燃え、硫黄などを含む頭薬に燃え移り発火するというしくみです」と話します。
火がつくのは一瞬なので目で確認できませんが、摩擦で先に側薬の赤リンが燃えます。それがマッチ棒の先に燃え移るのです。
頭薬と側薬に分かれているマッチを「安全マッチ」と呼びます。「安全マッチ」の場合、火がつくためには頭薬と側薬があることと、すった時の摩擦が必要となります。発火温度は200度以上で、自然発火のおそれはありません。それに対して、頭薬をザラザラしたところでするだけで火がつく「摩擦マッチ」もありますが、日本では作られていません。
マッチの歴史は1827年にイギリスの薬剤師、ジョン・ウォーカーが摩擦マッチを発明するところから始まります。その後、黄リンを使ったマッチが出回りますが、毒性があり、35度でも自然発火する危険なものでした。52年にスウェーデンで頭薬と側薬に分かれた現在の「安全マッチ」が開発されました。
日本では、清水誠が75年に初めて工業的にマッチの生産を始めました。兵庫県神戸市で製造が盛んになり、神戸港から世界に輸出されました。マッチは明治時代半ばから大正時代半ばにかけて、綿織り糸、銅と並ぶ神戸港の重要な輸出商品でした。
神戸でマッチの製造が盛んになったのは、雨が少なく温暖な瀬戸内式気候が乾燥工程の多いマッチの製造に適していたことや、貿易を担う神戸港があり、華僑(外国に住む中国人)がマッチを輸出したことなどが理由として挙げられます。現在は兵庫県姫路市が中心となり、日本の生産量の約8割を占めています。生産量の約2割はヨーロッパやアメリカに輸出しています。
山下さんは「プラスチックや化石燃料などを使用しているライターと比べると、箱は再生紙を利用し、棒には成長の早い木を使っているので環境にやさしい製品です。ライターの人工的な火に対して、マッチの火は温かみを感じられます」と話しました。【毎日小学生新聞編集部・篠口純子】
(毎日小学生新聞2022年2月1日掲載)

災害時に備えた缶入りマッチ。売れ行きは好調という=神戸市中央区で2022年5月31日、小坂剛志撮影
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