大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

土地によって変わる「たぬき」【日本語をもっとつかまえろ!】

国語の授業をたのしんでいますか? 毎日小学生新聞の連載「日本語どんぶらこ」では、人呼んで「ことばハンター」こと『三省堂国語辞典』の編さん者の飯間浩明さんが身近にあって気になる日本語をとりあげています。金井真紀さんのほっこりしするイラストとともに、ことばの語源や新語や流行語など、気になることばをわかりやすく解説。ことばに関する疑問やモヤモヤがすっきりすると好評です。
この春、連載をまとめた最新刊『日本語どんぶらこ ことばは変わるよどこまでも』が発売されましたが、ことばに興味を持ったあなたも、国語に苦手意識があるあなたも、ことばの森で遊んでみませんか? ここでは既刊の『日本語をつかまえろ!』、『日本語をもっとつかまえろ』から、気になるコラムを一部ご紹介いたします。

 私の出身地、香川県は「さぬきうどん」が名物です。もちろん、私も大好き。ゆでたうどんをだしにつけて食べることが多いですが、「きつねうどん」も好きです。でも、「たぬきうどん」はあまり食べないかな。
「きつねうどん」は知っていますよね。うどんに油あげをのせたものです。一方、「たぬきうどん」は? 香川県ではメニューにないお店が多いと思います。

 東京では、うどんよりそばが多いですが、「きつね」は、やはり油あげをのせたもの。一方、「たぬき」は、あげ玉、つまり、小さくて丸い、天ぷらのころものかたまりをかけたものです。私はこの「たぬき」のメニューを、東京に引っ越こしてから初めて見ました。
 ところが、大阪では「きつね」「たぬき」の区別のしかたがちがいます。「きつね」は、うどんに油あげをのせたもの。一方、「たぬき」は、そばに油あげをのせたものです。つまり、油あげを、うどんとそばのどちらにのせるかで、呼び名が変わるのです。

 京都に行くと、またしても事情が変わります。京都では油あげを細かくきざみます。その油あげを、うどん、またはそばにのせたものが「きつね」。そして、それにとろっとした「あん」をかけたものが「たぬき」です。

 どの土地も「きつね」と言えば油あげをのせるのは共通します。でも、「たぬき」と言った場合、どんなうどん、またはそばになるかは、土地によって変わるのです。

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日本語をもっとつかまえろ!

著者:飯間 浩明 イラスト:金井 真紀 出版社:毎日新聞出版 定価:1,540円

本書の目次


第1章 日本語には仮名がある
第2章 ややこし楽しい漢字
第3章 くり返すための記号
第4章 言える形と言えない形
第5章 あなたと私の秘密
第6章 作文を書く、詩を書く
第7章 時代は変わっていく
第8章 みんなに優さしいことば
第9章 料理はことばが大事
第10章 方言でかんちがい
第11章 落語のたのしみ方
第12章 12ひきの仲間たち
第13章 色の名前もいろいろ

著者プロフィール

飯間浩明(いいま・ひろあき)
1967年、香川県生まれ。国語辞典編さん者。
『三省堂国語辞典』編集委員。国語辞典の原稿を書くために、新聞や雑誌、放送などから新しいことばを拾う毎日。街の中にも繰り出して、気になる日本語の採集を続ける。国語辞典を楽しむイベント「国語辞典ナイト」でも活躍。おもな著書に『辞書を編む』『小説の言葉尻をとらえてみた』(ともに光文社)『国語辞典のゆくえ』『つまずきやすい日本語』(ともにNHK出版)『ことばハンター』(ポプラ社)『知っておくと役立つ街の変な日本語』(朝日新聞出版)などがある。

金井真紀(かない・まき) 
1974年、千葉県生まれ。文筆家、イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を合い言葉に世界各地で人の話を拾い集めて、文や絵にしている。おもな著書に『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)『はたらく動物と』(ころから)『パリのすてきなおじさん』(柏書房)『子どもおもしろ歳時記』(理論社)『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言