国語の授業をたのしんでいますか? 毎日小学生新聞の連載「日本語どんぶらこ」では、人呼んで「ことばハンター」こと『三省堂国語辞典』の編さん者の飯間浩明さんが身近にあって気になる日本語をとりあげています。金井真紀さんのほっこりしするイラストとともに、ことばの語源や新語や流行語など、気になることばをわかりやすく解説。ことばに関する疑問やモヤモヤがすっきりすると好評です。
この春、連載をまとめた最新刊『日本語どんぶらこ ことばは変わるよどこまでも』が発売されましたが、ことばに興味を持ったあなたも、国語に苦手意識があるあなたも、ことばの森で遊んでみませんか? ここでは既刊の『日本語をつかまえろ!』、『日本語をもっとつかまえろ』から、気になるコラムを一部ご紹介いたします。
原稿用紙3枚ぐらいの作文を書き始めて、1枚ほど書いたところで、もう書くことがなくなってしまった。ああ、どうしよう、となやんだことはありませんか。
解決は簡単です。書くことがなくなるのは、具体例を集めていないからです。たくさん例を集めれば、文章は書き進められます。
具体例とは、たとえばこんなものです。私は夏なつ目め 漱そう石せき「坊ぼ っちゃん」について、「主人公は人とのつきあい方がへた」と言いました。どうしてそう思ったのでしょうか。
主人公の新任教師は、中学生たちにからかわれます。そばを4はい食べた翌日、教室の黒板にそれを冷やかす落書きがあり、主人公はおこります。でも、そこで「君たち、よく見ているね」と笑えば、生徒たちと仲よくなれたかもしれません(具体例1)。
また、主人公は、きらいな同僚の先生たちからつりにさそわれて、ついて行きます。せっかく行ったのに、つりをしている間、ずっと無愛想です。でも、相手をいやな気持ちにさせないことは礼儀です(具体例2)。
……と、今、私が示したのが具体例です。こういう例をいくつか出せば、読んでいる人は、主人公が「つきあい方がへた」ということがよく分かるはずです。原稿用紙のます目も、どんどんうまっていきます。
長い文章は、多くの具体例に支えられています。書いている途中で困ったら、例が足りないのではないか、と考えてみましょう。

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日本語をもっとつかまえろ!
著者:飯間 浩明 イラスト:金井 真紀 出版社:毎日新聞出版 定価:1,540円
本書の目次
第1章 日本語には仮名がある
第2章 ややこし楽しい漢字
第3章 くり返すための記号
第4章 言える形と言えない形
第5章 あなたと私の秘密
第6章 作文を書く、詩を書く
第7章 時代は変わっていく
第8章 みんなに優さしいことば
第9章 料理はことばが大事
第10章 方言でかんちがい
第11章 落語のたのしみ方
第12章 12ひきの仲間たち
第13章 色の名前もいろいろ
著者プロフィール
飯間浩明(いいま・ひろあき)
1967年、香川県生まれ。国語辞典編さん者。
『三省堂国語辞典』編集委員。国語辞典の原稿を書くために、新聞や雑誌、放送などから新しいことばを拾う毎日。街の中にも繰り出して、気になる日本語の採集を続ける。国語辞典を楽しむイベント「国語辞典ナイト」でも活躍。おもな著書に『辞書を編む』『小説の言葉尻をとらえてみた』(ともに光文社)『国語辞典のゆくえ』『つまずきやすい日本語』(ともにNHK出版)『ことばハンター』(ポプラ社)『知っておくと役立つ街の変な日本語』(朝日新聞出版)などがある。
金井真紀(かない・まき)
1974年、千葉県生まれ。文筆家、イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を合い言葉に世界各地で人の話を拾い集めて、文や絵にしている。おもな著書に『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)『はたらく動物と』(ころから)『パリのすてきなおじさん』(柏書房)『子どもおもしろ歳時記』(理論社)『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った 世界ことわざ紀行』(岩波書店)『テヘランのすてきな女』(晶文社)などがある。