大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

博士は「大変じゃ」って言う?【日本語をもっとつかまえろ!】

国語の授業をたのしんでいますか? 毎日小学生新聞の連載「日本語どんぶらこ」では、人呼んで「ことばハンター」こと『三省堂国語辞典』の編さん者の飯間浩明さんが身近にあって気になる日本語をとりあげています。金井真紀さんのほっこりしするイラストとともに、ことばの語源や新語や流行語など、気になることばをわかりやすく解説。ことばに関する疑問やモヤモヤがすっきりすると好評です。
この春、連載をまとめた最新刊『日本語どんぶらこ ことばは変わるよどこまでも』が発売されましたが、ことばに興味を持ったあなたも、国語に苦手意識があるあなたも、ことばの森で遊んでみませんか? ここでは既刊の『日本語をつかまえろ!』、『日本語をもっとつかまえろ』から、気になるコラムを一部ご紹介いたします。

 物語の世界では、「きれいだわ」「うれしいぜ」など、今ではあまり使われないことばを話す人物が出てきます。

博士はかせ 、これを見てください!」
「おお、大変じゃ。ウイルスの感染者が急激に増えておる!」

 こんな会話をする研究者も、まんがなどによく登場します。小さいころの私は、「~じゃ」「~おる」なんて言う博士が本当にいるのかな、と疑問に思っていました。
 大学に入ると、博士のように研究している先生はおおぜいいました。でも、話し方はふつうの大人と同じでした。先生を「博士!」「教授!」と呼ぶ人もおらず、ふつうに「中村先生」のように言っていました。

 まんがの博士の「~じゃ」「~おる」などのことばは、江戸えど時代の上方かみがた(関西)のことばをもとに作ったものです。博士っぽいキャラを強調することばづかいで、すでに明治時代の読み物にも似た例があります。
 物語の登場人物は、実際にない日本語(バーチャル日本語)を使うことが分かっています。いかにも女性らしいことば、男性らしいことば、博士らしいことばなど、バーチャル日本語はいろいろあります。
 バーチャル日本語の研究を最初に始めたのは、金水敏きんすいさとしさんという日本語学者です。金水さんは大学教授ですが、もちろん「~じゃ」「~おる」とは言いません。私たちと同じことばづかいをしています。

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日本語をもっとつかまえろ!

著者:飯間 浩明 イラスト:金井 真紀 出版社:毎日新聞出版 定価:1,540円

本書の目次


第1章 日本語には仮名がある
第2章 ややこし楽しい漢字
第3章 くり返すための記号
第4章 言える形と言えない形
第5章 あなたと私の秘密
第6章 作文を書く、詩を書く
第7章 時代は変わっていく
第8章 みんなに優さしいことば
第9章 料理はことばが大事
第10章 方言でかんちがい
第11章 落語のたのしみ方
第12章 12ひきの仲間たち
第13章 色の名前もいろいろ

著者プロフィール

飯間浩明(いいま・ひろあき)
1967年、香川県生まれ。国語辞典編さん者。
『三省堂国語辞典』編集委員。国語辞典の原稿を書くために、新聞や雑誌、放送などから新しいことばを拾う毎日。街の中にも繰り出して、気になる日本語の採集を続ける。国語辞典を楽しむイベント「国語辞典ナイト」でも活躍。おもな著書に『辞書を編む』『小説の言葉尻をとらえてみた』(ともに光文社)『国語辞典のゆくえ』『つまずきやすい日本語』(ともにNHK出版)『ことばハンター』(ポプラ社)『知っておくと役立つ街の変な日本語』(朝日新聞出版)などがある。

金井真紀(かない・まき) 
1974年、千葉県生まれ。文筆家、イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を合い言葉に世界各地で人の話を拾い集めて、文や絵にしている。おもな著書に『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)『はたらく動物と』(ころから)『パリのすてきなおじさん』(柏書房)『子どもおもしろ歳時記』(理論社)『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言