10代のうちに強くする! 骨のチカラ【月刊ニュースがわかる5月号】

なぜ 作るのに手間のかかるこんにゃくを食べるの? 【疑問氷解】

Q なぜこんにゃくを食べるのですか? 食べるまでに大変手間がかかるのに。(漫画家、星野ルネさん)

日本独自の食文化 健康志向で輸出も

 A アフリカでも、ふかす、焼くなどしていろんなイモを食べるけれど、コンニャクイモはアク抜きなどの手間が大変で食べません。でも日本ではいろんな形にして食べていて、不思議です――という質問です。こんにゃくの研究で博士号を取った「こんにゃく博士」、宇都宮大学(栃木県)の神代英昭准教授に聞きました。

 こんにゃくの原料、コンニャクイモを普通に食べる国は実は日本だけ。原産地のインドシナ半島でも食べないそうです。海外では花の形や悪臭から「悪魔の舌」とか、イモの形から「ゾウの脚」とも呼ばれます。およそ食べ物とは思えない呼び方ですね。

 コンニャクイモにはシュウ酸という毒があり、煮ても焼いても取れません。イモを乾かしてすり下ろすか粉にし、カルシウムを含む「凝固剤」を入れてよく練ると、ようやく食べられるようになります。

 どうしてこの方法が見つかったかは「こんにゃく最大の謎といわれます」と神代さんは話します。こんにゃくにするにはさらに、型に入れて固めた後、ゆでて冷たい水にさらします。イモは秋に収穫して次の春に植え直し、2~3年繰り返して大きくします。天気や病害の影響を受けやすく、時間も手間もかかります。

 日本には6世紀ごろ、仏教とともに中国から伝わり、薬として僧や貴族に食べられていたそうです。鎌倉時代から一般に広がり、江戸時代には「蒟蒻百珍」というレシピ本も出ました。常陸国(今の茨城県)の農家、中島藤右衛門(1745~1825年)がコンニャクイモを水車で粉にする方法を発明し、運ぶのも長く保存するのも便利で、一気に広まりました。

 特に刺し身こんにゃくは、見た目や歯ごたえがフグ刺しに似て「山のフグ」といわれます。こんにゃく好きの俳人、松尾芭蕉も、この刺し身こんにゃくを俳句に詠んでいます。しらたき(糸こんにゃく)や玉こんにゃくなど、さまざまな形や味、食感を楽しむ日本独自の食文化として発展し、藤右衛門は神様として茨城県大子町の蒟蒻神社にまつられています。

 現在、コンニャクイモの9割は国産。うち9割以上が、群馬県産です。最近は、こんにゃくパスタや、お米とまぜてたく「こんにゃく米」などダイエット食品が開発され、海外でも食べる人が現れて、輸出がこの10年で5倍に増えたそうです。こんにゃくの99%は水。超低カロリーで食物繊維やカルシウムが豊富な健康食品として、糖尿病や便秘などの人にも役立っています。さらに宇宙食や、食べ物以外にも、軟らかさや形が自由に変えられるので臓器のようにかたどって、医師の手術の練習用教材も開発されています。

 神代さんは「こんにゃくをぜひ、手作りしてみて。意外に簡単で、うまくできなくても、作りたてはとてもおいしいですよ」と話しています。日本こんにゃく協会のホームページで手作りセットが販売されています。【毎日小学生新聞編集部・山田大輔】

(毎日小学生新聞2023年10月16日掲載)

全国のファミリーマートで新発売する群馬県産こんにゃく原料100%の商品=群馬県庁で2025年2月4日、田所柳子撮影

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