Q イギリスって一つの国ではないの? イギリス連邦って何?(東京都・小4)
4か国の連合王国 旧植民地も連邦に
A 日本人が「イギリス」と呼ぶ国は、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドという四つの国の集まりです。正式な名は「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」。アイルランド島は以前全てイギリス領でしたが、南部が1922年に自治権を獲得して49年に独立し(今のアイルランド共和国)、北部はイギリスに残りました。
2019年のラグビー・ワールドカップ(W杯)では、イングランドなど4か国が別々のチームで戦いました。アイルランドは、北アイルランドとアイルランド共和国が1チームで出場しました。2022年のサッカーW杯でもイングランド対ウェールズ戦がありました。普通1国1チームですが、ラグビーやサッカーは国際組織ができる前から4か国それぞれに競技団体があり、今も別々の出場が認められています。
一方、外交や政治、経済などの面では「一つの国」になります。国際連合には1か国として加盟し、2020年1月には、イギリスとしてヨーロッパ連合(EU)から離脱しました。ちなみに「イギリス」と呼ぶのは日本だけ。ポルトガル語のイングレスから来ています。「英国」という言い方は、江戸時代に当て字で「英吉利」の漢字が使われたためです。英語では連合王国(United Kingdom)や、略してUKと書かれたりします。
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「イギリス連邦」は、19世紀に「七つの海を支配する」といわれる力を誇った「大英帝国」当時のイギリスの植民地や自治領だった国々の集まりです。正式な名を「コモンウェルス・オブ・ネーションズ」といいます。
2022年9月に、70年間イギリス国王だったエリザベス女王(エリザベス2世)が亡くなりました。息子が後を継いでチャールズ3世となりました。国王はイギリス連邦加盟国の一部の元首(国の代表)でもあります。
前身のイギリス連邦(ブリティッシュ・コモンウェルス)は1926年に生まれました。現在の連邦は49年に設立され、最初は8か国でしたが、アフリカやアジアの国々が独立して加盟し、現在は56か国です。互いに自由で平等のゆるやかな集まりで、首脳会議が2年に1度あります。民主主義や人権のルールを守っているかを確認し合い、貧困や環境悪化などに苦しむ加盟国を助けたりします。
加盟国には、チャールズ3世を元首とする国と、独自の君主がいるマレーシアやトンガなどの王国、大統領などの元首を国民が選ぶインドや南アフリカなどの国があります。このうち、カナダやオーストラリアなど15か国はチャールズ3世が元首です。
もちろんイギリス国王は、これらの国々の政治に関わるわけではありません。ただ、エリザベス女王は長い間、君主というより家族や母のような存在として、加盟国をつなぐ大きな役割を果たしてきました。特に、アフリカで人種差別政策の撤廃に協力した女王の功績は大きいといわれます。【毎日小学生新聞編集部・木谷朋子】
(毎日小学生新聞2022年12月19日掲載)

チャールズ英国王の戴冠式を控え、英国旗が掲げられたロンドンの繁華街=2023年5月2日、篠田航一撮影
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