Q なぜイヌはネコ目なのでしょうか?(兵庫県小野市、小6)
ネコと祖先が同じともに「食肉目」
A 質問を読んで、思わずイヌの目を思い浮かべたのですが、違いました。「ネコ目(め)」ではなく「ネコ目(もく)」。動物を種類ごとに分ける時の呼び方です。イヌなのにネコに分類されるとは確かに不思議です。
研究者の団体である日本哺乳類学会が作った分類リストでは、イヌはほ乳類のなかで「食肉目イヌ型亜目イヌ科」にあたります。ほ乳類は「子を乳で育てる生き物」を指します。食肉目は「肉を食べる生き物」という意味の「カーニボラ」という言葉を日本語に訳したものです。食肉目の中にはイヌ科のほか、ネコ科やイタチ科、クマ科などがあります。
この「カーニボラ」を、1988年に文部省(今の文部科学省)が作った「学術用語集動物学編」では「ネコ目」と訳しました。カタカナでわかりやすく表すため、その分類のなかの代表的な種類の名前を使うことにしたのです。教科書は、この学術用語集の言葉が使われます。
でも、この呼び方では分類の特徴がわからないため、研究者たちは「食肉目」という言葉を使い続けています。
イヌとネコはタイプの違うペットですが、大きく分けると同じ「食肉目(ネコ目)」なんですね。麻布大学獣医学部教授でイヌを研究する菊水健史さんにその理由を聞くと、「イヌとネコに共通する祖先はミアキスという動物です。そこからだんだん分かれたのです」と教えてくれました。
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大きな分かれ目は狩りの仕方でした。ミアキスは森にすみ、1匹で狩りをする生き物でした。森から草原に出たのがイヌの祖先です。群れで獲物を追いかけるようになりました。
一方、森に残ったネコの祖先は1匹で待ち伏せして、やって来た獲物に飛びつきます。
イヌが人間と暮らし始めたのは3万~5万年も前のことです。当時、人間は移動しながら狩りをしたり木の実を集めたりする生活をしていました。においを追う能力の高いイヌを人間が利用し始めたようです。
人間は狩りをしたり、敵から身を守ったりする目的に合わせてイヌの種類を作りました。人間とコミュニケーションできる種類のイヌが選ばれて残っています。
ネコの方は、人間が手なずけたわけではありません。8000年前、人間が移動せず同じ場所に住んで作物を育てるようになると、穀物を食べるネズミが出ます。ネズミをとるネコは役に立つので追い払われず、人間と一緒に暮らしました。ネコの種類は見た目で選ばれてきました。
菊水さんは「今でもイヌは盲導犬や災害救助犬などさまざまな仕事をしていますが、人の命令で働くネコはいません。これは歴史の違いです」と話します。【毎日小学生新聞編集部・黒崎亜弓】
(毎日小学生新聞2020年7月7日掲載)
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