【ニュースがわかる2024年10月号】巻頭特集は「発明が世界を変える」

水害に備えよう【ニュース知りたいんジャー】

大雨による水害が心配な季節になりました。雨が降ること自体は防げませんが、人が備えることで被害は小さくすることができます。そのためには、何に気をつければいいのでしょうか。大雨についてのニュースでよく出てくる言葉や、知っておいたほうがいい情報を紹介します。【野田武】


 ◇激しい雨が増えているの?


 「地球温暖化」が起きていることは、さまざまなニュースで見聞きしたことがあると思います。地球温暖化は、気象にも大きな影響を与えているのです。
 まず、気温が上がると、雨の降り方が変わってきます。例えば、1時間の降水量が50㍉㍍以上の大雨の発生回数が、多くなっています。1976~85年の発生回数は、1年間に平均226回でした。これが2010~19年には、327回になりました。
 気温が上がると大雨が降りやすくなるのは、空気中に含まれる(ためられる)水蒸気の量が関係しています。温度が高いほうが、空気中に水蒸気をたくさんためられます。例えるなら、水をためられるバケツが大きくなるようなものです。大きなバケツには水をたくさんためられるように、空気中に水蒸気をたくさんためられるので、大雨になるというわけです。
 他にも地球温暖化の影響で、大型の台風が発生しやすくなっています。


 ◇「線状降水帯」って何?


 最近、気象のニュースでよく見聞きする言葉ですね。雨や雷を伴う積乱雲が次々と発生して、長さ50~300㌔㍍程度にわたって、帯状に雲が連なることを指します。同じ場所で数時間にわたって大雨を降らせます。洪水や土砂災害につながる恐れがあります。
 線状降水帯も、地球温暖化に伴って発生が増えると考えられています。気象庁などの研究チームによると、日本全国で1年間に発生する線状降水帯の回数は、これまでは1年間に平均23回でした。これが、世界の平均気温が2度上がると31回に、4度上がれば38回に増え、多い年は60回以上になると予測しています。
 気象庁は、線状降水帯が発生しそうな時には、予測情報をあらかじめ発表しています。発生の半日ほど前に出されますが、正確な予測は難しいため、予測情報が出ても線状降水帯が発生しないこともあります。ただ、いずれにしても大雨になる可能性は高いので、注意は必要です。


 ◇「ハザードマップ」について教えて


 大雨が降った時、地域によって、水につかって水害が起きやすい場所と、起きにくい場所があります。市区町村が、水につかる深さを予測して地図を色分けしたものが「ハザードマップ」です。避難場所も載っています。住民に情報を知ってもらい、普段の防災対策や避難に役立てもらうのが目的です。役所や、地域の公民館などで配られています。
 一般的に水害が起きやすいのは、大きな川から近い地域や、「ゼロメートル地帯」と呼ばれる海の水面より標高(土地の高さ)が低い地域です。水は高いところから低いところへ流れます。これらの地域は、他の地域よりも標高が低いため、水が集まりやすいのです。ハザードマップでは、水につかりやすいことを示す濃い色になっています。なお、都市部では、昔は川だった土地が埋められて住宅地などになっている地域もあります。こうした場所も水害が起きやすいので、ハザードマップで確かめましょう。
 ハザードマップは、インターネットに接続したパソコンでも見ることもできます。ただ、災害時は停電の恐れがあるので、印刷された紙の形で持っておくのが望ましいです。


 ◇土砂災害もニュースになるよね


 7月12日の未明、愛媛県松山市で、山の土砂が崩れ、ふもとの木造住宅に流れ込んで住民3人が亡くなる災害がありました。専門家の調査などで、それまでの間に降り続いた雨が原因となった可能性が指摘されています。
 土砂災害は、大雨によって地面がゆるみ、山や急な斜面が崩れる「がけ崩れ」や、川や谷を土砂や石、水が混じって流れ落ちる「土石流」などがあります。がけがひび割れるなどの前触れがある場合もありますが、短い時間で一気に発生し、人が逃げ遅れて命を奪われる怖いものです。
 特に、松山の災害のように、人が寝ている時間帯は、より危険が高まります。山の近くに住んでいる場合や、長く雨が降り続いている時には、早めの避難が必要になります。


 ◇避難についても考えておこう

 大雨で水害の恐れがある時は、自治体から「避難指示」など避難の呼びかけがある場合が多いです。こうした時にどう行動するか、あらかじめ家族で話し合っておきましょう。避難場所へ向かうのに通る道のりは、ハザードマップを参考にして、浸水しそうな場所を避けてください。
 家族が全員そろっていない時間帯に、避難しなければならないこともあります。万一の時にどこへ避難して集合するか、場所をあらかじめ決めておくといいでしょう。
 避難は、外が明るく、小雨のうちに済ませるのが原則です。暗くなってからの避難行動は、危険を伴います。また、道路が水につかり、水深が30㌢㍍に達すると大人でも歩きにくくなります。できるだけ早めに避難行動を始めましょう。(2024年07月31日毎日小学生新聞より)