神田外語キャリアカレッジは、神田外語大学や神田外語学院を母体とする神田外語グループの一事業体として、語学を起点にグローバル社会における課題の解決やプロジェクトを推進できる人材の育成に取り組んでいます。今回はそんな当校の代表、仲栄司のグローバルビジネスでの体験談をお送りいたします。グローバル環境の中で仕事を進める上でのヒントや異文化についての気づきなど体験談を交えながら繰り広げられる世界には、失敗談あり、ハラハラ感あり、納得感あり。ぜひお気軽にお読みください。
ヨーロッパの夏休みはだいたい3~4週間くらい取って、リゾート地で長期滞在する人が多いようです。ホテルだけでなく、アパートを借り切って自炊しながら長期滞在するという人も結構いました。イタリア人ももちろんその例に漏れません。
私が家族と一緒にサルディーニャ島に3泊4日で旅行したとき、ホテルにはイタリア人の家族が長期滞在していました。当時、3歳の長男と1歳にもならない次男を連れて、家族4人で滞在しましたが、ホテルにベビーシッターもいましたので、観光に出たときなどは子どもを預けることができました。初日は海水浴、二日目は島を船でめぐり、三日目は島をドライブする、といった具合に我々は毎日予定を組んで過ごしました。ゆっくりすることもなく、朝食が終わるとそうしたイベントに繰り出すという感じでした。
朝食を終えて海水浴に出かけたときでした。二時間ほど海辺で楽しんだあとランチをしようとホテルに戻ったとき、朝食のときにいたイタリア人の家族がまだレストランにいるのです。これにはびっくりしました。この人たちは我々が海水浴をしている間もずっと談笑していたのです。テーブルにはランチに向けて、ワインもありました。泳いだり、観光したりしないのかな、とそのときは思いましたが、彼らにとってはそんな風に時間に追われて休暇を過ごすなんてあり得ないのでしょう。話が弾めばずっとそこにいて時間を楽しむ。話に疲れたらちょっと海岸に出向いて泳ぐ。そんな時間の過ごし方なんです。時間に追われることなく、気の向くままに休暇を楽しんでいました。
こちらは予定をびっしり組んで、今日は海水浴、明日は観光、その合間に食事をするという感じです。でも、イタリア人は、食事を楽しみ、その合間に少し海水浴を楽しむといった具合で、我々とまったく逆のパターンです。そんなイタリア人の休暇の過ごし方を見ていると、馬鹿らしくなってきました。我々はいったい何に追われているんだろう。休暇なんだから何もびっしり予定を組んでバタバタする必要はないんじゃないか、と思いました。
あるイタリア人家族なんかは、友達家族と夕方4時くらいからワインを飲んで、ディナーに入り、さらに食後のグラッパ(イタリア特産の食後酒)を堪能しながら夜遅くまでずっと同じ場所で談笑しているのです。そんな光景を見たとき、とてもかなわないなと思いました。その余裕、価値観の違い、何が人生で大事かということを突き付けられた思いがしました。仕事でも本社から余計な要望を受けて慌てている私に”Don’t panic. Don’t panic.”と言うイタリア人の余裕は、人生のどこに立脚点を置いているかということをまざまざと感じさせてくれます。休暇の過ごし方はそのことの端的な現れなのだろうと思いました。
イタリアで過ごして学んだはずなのですが、日本に帰国して夏休みに旅行に出ると、やはり予定をびっしり組んで時間に追われる旅行をしてしまっています。孫もできた今、そろそろイタリア人のような休暇の過ごし方をしたいと思っていますが、果たしてできるかどうか。「結果よりプロセス」ではないですが、「観光より共にいる時間」を大切にした休暇を過ごそうと思っています。
著者情報:仲 栄司
大学でドイツ語を学び、1982年、NECに入社。退職まで一貫して海外事業に携わり、ドイツ、イタリア、フィリピン、シンガポールに駐在。訪問国数は約50カ国にのぼる。NEC退職後、 国立研究開発法人NEDOを経て、2021年4月より神田キャリアカレッジに。「共にいる時間を大切に、お互いを尊重し、みんなで新たな価値を創造していく」、神田外語キャリアカレッジをそんなチームにしたいと思っています。俳句と歴史が好きで、句集、俳句評論の著書あり。