暑くなってくると食べたくなるのがアイスクリームやアイスキャンディー。
日本アイスクリーム協会の調査によると、アイスクリームがおいしく感じられる気温は、半数の人が25度ぐらいとの答えでした。アイスにはどんな種類があるのでしょうか。もっとおいしく食べるには、がまんも必要なようですよ。【野本みどり】
◇日本ではいつから売ってたの?
日本でアイスクリームが最初に製造販売されたのは、今の神奈川県横浜市で1869(明治2)年6月のことです。「あいすくりん」といいました。アメリカやヨーロッパの文化が取り入れられた「文明開化」とともに、アイスクリームの歴史も始まりました。
1920(大正9)年になると工業生産が始まり、レストランでしか食べられなかったアイスクリームが家庭でも食べられるようになりました。55(昭和30)年ごろには、家庭に冷凍庫付き冷蔵庫が増え、アイスクリームは身近なものになっていきます。同じころ、カップアイスが登場します。55年、協同乳業が1本10円のアイスクリームバーを発売。60年には当たりくじ付き「ホームランバー」を発売すると、子どもたちに大ヒットしました。ホームランバーは今も販売されています。
東京オリンピックが開かれた64(昭和39)年、日本アイスクリーム協会が5月9日を「アイスクリームの日」と決めました。
◇いろんな種類があるようだけど?
アイスクリームの外箱やパッケージには「種類別」と記載されていますね。
アイスは、「乳固形分」と「乳脂肪分」の量によって、アイスクリーム▽アイスミルク▽ラクトアイス▽氷菓――の4種類に分けられます。「乳固形分」は乳製品の中の水分以外の部分で、「乳脂肪分」は乳固形分に含まれる脂肪分のことです。四つのうち、乳固形分と乳脂肪分が最も多く含まれているのがアイスクリームで、ミルクの風味が感じられます。アイスミルク、ラクトアイスの順に、乳固形分と乳脂肪分は減っていきます。氷菓は、アイスキャンディーやかき氷で、乳固形分はほとんどありません。
分け方は、食品衛生法に基づく二つの基準などによって決められています。ちなみに2019年は、金額、量ともにラクトアイスが最も多く売れました。
◇アイスの種類
- アイスクリーム(乳固形分15.0%以上 うち乳脂肪分8.0%以上)
- アイスミルク(乳固形分10.0%以上 うち乳脂肪分3.0%以上)
- ラクトアイス(乳固形分3.0%以上)
- 氷菓(それ以外)
◇どれくらいアイスを買っている?
総務省の家計調査(2人以上の世帯)によると、2019年の1年間のアイスクリームやシャーベットに使ったお金は、1世帯平均9701円でした。10年前の09年は7500円あまりで、だんだんと増えています。
また、17~19年の1年の平均で、1家庭がどれだけアイスクリームやシャーベットにお金を使ったかが地域別に示されています。1位は石川県金沢市で1万1537円、2位は静岡県浜松市の1万1151円、3位は福島市の1万1119円と続きます。
日本アイスクリーム協会などの調査によると、金沢市の消費が多いのは、世帯あたりの収入が高いことや他の甘いお菓子の消費も多く、甘い物好きなことなどが考えられるとしています。
最も支出が少なかったのは沖縄県那覇市の6940円、次は和歌山市の7618円、香川県高松市の8228円でした。
◇アイスクリームなど年間支出ランキング(総務省の「家計調査」より)
- 金沢市(石川県)1万1537円
- 浜松市(静岡県)1万1151円
- 福島県(福島県)1万1119円
- 盛岡市(岩手県)1万656円
- 山形市(山形県)1万629円
- 富山市(富山県)1万449円
- 高知市(高知県)1万437円
- 川崎市(神奈川県)1万262円
- さいたま市(埼玉県)1万196円
- 広島県(広島市)1万149円
◇商品はどうやって開発するの?
菓子メーカーのロッテが1981年に発売した「雪見だいふく」は、アイスを餅で包んだユニークさ。発売から40年近くたちますが、今も人気商品です。
雪見だいふくブランド課の課長、安藤崇平さんは「アイスを作り始めたのが他のメーカーより遅かったので、今までの商品と違う、菓子メーカーの技術を生かした商品を考えました」と、開発当時を説明します。秋と冬にも食べたくなるアイスを目指しました。あんを包んだ和菓子をヒントに、1980年にアイスをマシュマロで包んだ「わたぼうし」を発売。もっと日本らしい素材にしようと翌年、マシュマロを餅に変えて発売しました。
定番だけでなく、年4回、味を変えた限定品を出しています。新しい味の開発について安藤さんは「最近ではタピオカミルクティーなど、人気のあるものを意識しますが、商品が持つイメージからかけ離れてもよくありません」と苦労を語ります。今年5月に発売された「れもんチーズケーキ風」は、お客さんから食べたい味を募集して商品化しました。
雪見だいふくのおいしい食べ方を教わりました。部屋の温度が25度の時は、冷凍庫から出して8分待ってから食べると、餅とアイスがやわらかくなるそうです(冷凍庫の機種や保管状態で変わります)。さらに、メロンソーダの上に乗せてフロートのようにしたり、食パンに乗せて上からスライスチーズを乗せてトースターで焼いたりするのもお勧めとのことです。
◇最近の傾向は?
年間1000種類以上のアイスを食べるというアイス評論家、アイスマン福留さん。「お菓子とアイスを組み合わせたパフェのような層構造の商品が増えてきました」と、最近の傾向を説明します。フルーツソースやクッキーが入っていたり、2種類のアイスが入っていたり、さらに自分で菓子を乗せてカスタマイズ(自分の好みに合わせる)する商品もあります。
菓子メーカーが作ったアイスや、ご当地アイスもあります。アイスマン福留さんが注目するのは、コンビニエンスストアのプライベートブランド(PB)。系列店でしか買えない商品が、各コンビニにあります。新商品の競争ははげしく、一度きりの商品もあります。
おいしくアイスを食べる方法はあるのでしょうか。アイスマン福留さんは「クリーム系のアイスはできたてはマイナス5~7度くらいです。家庭の冷凍庫はマイナス18度くらいですので、出してすぐは硬いアイスですが、5~10分くらい時間をおくと、甘さやうまみが感じられるようになります。フルーツソースやスポンジ生地が入っているアイスならしっとり、なめらかになりますよ」と、アドバイスします。(2020年07月15日掲載毎日小学生新聞より)