話を聞いたひと 石井大智(いしい だいち)さん STANDARD会長
週刊エコノミストで連載中の「挑戦者2022」。優れたアイデアや斬新なサービスで世の中を良くしようとする企業の取り組みを紹介しています。本サイトでは、誌面で紹介された「挑戦者」たちがどんな子どもだったのかを聞きました。※エコノミストオンライン「挑戦者2022」はこちら
人材教育、戦略コンサル、技術支援の3ステップで企業のデジタル変革を支援するのが、AI(人工知能)エンジニアの代表が率いる「STANDARD(スタンダード)」だ。
自動車メーカーや製薬企業など約530社のデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援を行ってきました。多くの日本企業はデジタル技術の活用の重要性を認識していますが、肝心のDXの知識や技術が不足しています。そういった企業に、単にツールを販売したり技術を提供するだけでなく、DXに関するリテラシーを身に付けてもらう「教育」からスタートし、業務改善にとどまらない新しい価値や利益をもたらすDXの新規事業の開発を一緒に目指すというのが私たちのスタンスです。
相談を受けるのは大手企業のDX推進部や経営企画部、新規事業担当部などですが、ほとんどが「DXの定義が分からず、何から手をつけてよいか分からない」という状態です。なかには、「コンサル会社にDXテーマ選定を依頼したが、自社に合わずプロジェクトが進まなかった」というケースもあります。
当社のDXリテラシー講座はオンラインで受講でき、DXに関する知識や意識を高めることができます。また、受講修了者にDXで取り組むべきアイデアの提出をお願いすることで、回答からその社特有の事情やニーズを把握。有望なアイデアを抽出します。その後は、投資すべき案件を絞り込み、実装に向けたコンサルティング、技術支援などを提案します。DX教育から新規事業開発・イノベーション創出まで一気通貫で行うDXコンサルが強みです。
■こどもの頃はどんな性格でしたか。
「飽きっぽい」や「落ち着きがない」と言われていました。よく言えば「好奇心旺盛」なのですが、まわりの子よりもクセが強かったため、悪い部分が目立ってしまったのでしょう。次々と色んなものに興味が移り、かと思えば急にひとつのことに没頭し、ときには大人をうんざりするほどに質問責めにしたりしていたのを覚えてます。よかったことを挙げるとするならば、あまりにもクセが強いため、それを「直す」ことを早々に諦め、どう「活かす」のかという考え方に切り替えられたことでしょうか。 中途半端な生き方をしても何も面白くないなとは、子どもながらに思っていました。
■こどもの頃によく読んでいた本があれば教えてください。
漫画家志望だったこともあり、小説や図鑑にはほとんど触れず漫画ばかり読んでいました。好きになったきっかけは、シンプルに文字だけより絵があった方が面白いということだけでした。ですが、いま思い返すと漫画を読むことは「とある感情を表現したいとき、どんな響きの言葉が相応しいのか」という言葉選びの感覚を掴む訓練になっていたように感じます。
現在、経営者という立場で、人に伝える言葉のひとつひとつが大きな影響力を持つ仕事をしていますが、 ここで培った感覚は大いに役に立っている実感があります。
■こどもの頃の夢を教えてください。
小学生の頃の夢は漫画家でした。プロ仕様の本格的な画材をホームセンターで買い揃え、好きな漫画のキャラクターを描いたり、オリジナルのストーリーやキャラクターを創作して遊んでいました。いま思い出すと恥ずかしくなってしまいますが。昔は夢がたくさんあって、数年のうちにコロコロと変わっていったのを覚えています。この頃の活動は今に全くつながっていないのですが、その時々で興味を持ったものに没頭できたという意味では価値を感じています。 いち分野の技能よりも、自分らしいあり方についての自己理解を深める機会になりました。
■仕事をしていてよかったこと、大変だったことを教えてください。
よかったことは「経営者の特権を使って、自分のクセを活かす環境を自分自身でデザインできたこと」、大変だったことは「たったひとりで数々の同調圧力と闘わなくてはならなかったこと」です。
こどもの頃からの「クセの強さ」が大きく影響しています。クセというものは、活かしようによって強みにも弱みにもなり得ます。
その程度が小さければ大体の環境に適応できますが、大きければ環境次第でパフォーマンスが上にも下にもブレます。そのため、深い自己理解を持つことと、まわりの環境をデザインしていくことが重要になります。
そして、そのためには、ときには常識から外れることや、少数派になることもいとわない姿勢が求められました。 親、教師、友達、他の経営者や投資家、すべての人に反対されても流されないためには苦労を要しました。
■子どもたちにメッセージをお願いします。
私のような強いクセを持った子どもたちに向けて。
そのクセは、活かし方ひとつで才能にも欠陥にもなり得ます。もし、あなたが自分自身の強いクセを自覚しているのであれば、それを活かし切るところまでをひとりでやり切るようにしてください。少しでも手を抜けば、100万点を目指せたはずの人生がマイナス100万点にひっくり返ることもあります。厳しいことに、このクセというものは小さい頃に誰かに潰されてしまえばそれまでです。遅くとも高校生くらいまでには、揺らがない自己理解を身に着けておきましょう。
(聞き手=加藤結花・エコノミスト編集部)