国際連合(国連、本部=アメリカ・ニューヨーク)が今月、創設80年を迎えます。国連は戦後の国際秩序の安定や人道状況の改善に貢献してきた一方、近年はロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突に十分対応できず、「機能不全」になっているとの批判も高まっています。国連はどのようにして生まれ、今どんな課題に直面しているのでしょうか。
国連って何をするところなの
世界
の平和
と安全
の維持
を目指
して、国家
が協力
するための国際
組織
です。1945年
10月
24日
に正式
に発足
し、現在
193か国
が加盟
しています。全
加盟国
が議席
を持
つ国連総会
をはじめ、安全保障理事会
(安保理
)、経済社会理事会
など六
つの主要
機関
があります。
国連ができた背景には、世界戦争を防げなかったという過去の失敗があります。第一次世界大戦(1914~1918年)後、国連の前身である国際連盟が設立されましたが、アメリカは議会の反対で参加せず、領土や軍備拡張を目指していた日本、ドイツ、イタリアなどが途中で脱退しました。
国際連盟は次第に形だけのものとなり、1939年に第二次世界大戦が起きました。2度目の世界大戦を防げなかった反省から、より強力で実効性のある国際組織の必要性が認識され、第二次大戦後に戦勝国を中心とした国連が発足しました。敗戦した日本は、1956年12月に80番目に加盟しました。
アメリカ・ニューヨークにある国連本部
どうやって物事を決めている?
国際連盟の議決は全会一致が原則でした。侵略国への対応も経済制裁にとどまり、スピードと実効性に欠けていました。そのため国連では多数決制が採用され、軍事的な制裁も可能になりました。
国連で制裁などの強制的な対応を決める重要な役割を与えられたのが、安全保障理事会(安保理)です。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の常任理事国5か国と、非常任理事国10か国(任期2年)で構成されています。日本は過去に非常任理事国を12回務めた経験があります。
安保理の決議は国連の中で唯一、法的な拘束力を持ち、多国籍軍による武力行使などを認めることが可能です。全ての加盟国が、安保理の決議に従わなければなりません。
安保理の役割をくわしく教えて
特に常任理事国5か国の地位が大きいです。法的拘束力のある決議は安保理15か国のうち9か国以上の賛成で成立しますが、常任理事国が一か国でも反対すれば、採択されません。これは「拒否権」と呼ばれる特権です。かつて国際連盟が大国の相次ぐ脱退で力を失ったことを踏まえて導入されました。利害の対立する大国を国連にとどめる効果がある一方、紛争解決の壁になるケースも少なくありません。
例えば、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、ロシア軍がすぐに撤退するよう求める決議案が採決にかけられましたが、ロシアが拒否権を行使しました。侵略行為を止められない国連に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「人類はもはや国連に期待できない」と失望しました。
また、2023年10月からのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘でも、パレスチナ自治区ガザ地区での即時停戦を呼びかける決議案などに対し、イスラエルを支持するアメリカが繰り返し拒否権を行使しました。国連のグテレス事務総長は「(安保理が)機能不全の状態にある」と指摘しました。
運営に必要なお金はどうしている?
国連は、加盟国が払う分担金などで運営されています。ところが最大の負担国であるアメリカが納得しておらず、深刻な財政難になっています。
2025年の国連通常予算約37億2000万ドル(約5500億円)のうち、アメリカの分担率は22%を占めます。これに対して、「アメリカ第一」を掲げるトランプ大統領は、国の経済力などで決まる分担率を「不公平だ」と批判し、拠出額を大きく減らす方針を打ち出しました。
資金不足に悩む国連は、組織の「効率化」を目指して大規模な組織改革に取り組んでいます。職員数の削減や、本部業務をアフリカ・ケニアの首都ナイロビに移す案などが検討されています。
仕組みを変えるのは難しい?
安保理の仕組みを変えようとする動きは、以前からあります。国連の加盟国は創設時の51か国から大幅に増えましたが、常任理事国の構成は当時から変わっていません。また、第二次世界大戦後に経済成長した新興国などが含まれておらず、地域のバランスを欠いているとの批判があります。
日本政府は1990年代から常任理事国入りへの意欲を表明し、常任・非常任理事国それぞれの数を増やす改革案を示してきました。戦後に独立を果たしたアフリカ諸国なども、公平性の観点から常任理事国入りを主張しています。また、常任理事国だけに与えられている拒否権の廃止を求める意見もあります。しかし、こうした改革案に常任理事国は消極的で、議論は進んでいません。
(2025年11月8日毎日小学生新聞より)
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国際連合 創設80年【ニュース知りたいんジャー】
https://www.newsgawakaru.com/news/251108