日本国憲法を味方にする【月刊Newsがわかる4月号】

「ふつうの学生がヒーローになるまでの物語」― 釧路高専での挑戦

私は釧路高専で働いています。
これまでたくさんの学生を見送ってきましたが、その中に、忘れられない一人がいます。
彼は、特別に目立つタイプではありませんでした。
テストでいつも一番だったわけでもありません。
ただ、好奇心がとても強い学生でした。

ある日、学生課にやってきました。
「観光をテーマにしたコンテストに応募したいんです。」

締め切りが迫っていました。
時間はほとんど残されていませんでした。
それでも、あきらめませんでした。アイデアをまとめ、仲間と話し合い、提出。
そして、見事に大賞を受賞しました。


それからしばらくして、地元の新聞に彼の名前が載りました。元大手企業出身者が、釧路で新たにIT企業を立ち上げる、という記事でした。

あの日、勇気を出して挑戦した“ふつうの学生”が、地域を動かす存在になっていたのです。ほかにも釧路高専には、こうした卒業生がいます。

地域コミュニティで新しい取り組みに挑戦している人。技術者出身ながら、銀行の経営トップとして活躍している先輩。コンビニでおなじみの「セブンカフェ」のコーヒーマシンを開発した中心人物。

卒業生座談会の様子(釧路高専提供)

でも、みんな最初は“ふつうの学生”でした。
失敗もしました。迷いもありました。
それでも、「やってみたい」をやめなかった。
いまの学生たちも挑戦しています。在学中から起業を目指して活動する学生もいます。海外に留学して世界に飛び出す学生もいます。勉強が少し不安でも大丈夫です。SSLという補習の仕組みがあります。
遠くから来る学生のために寮があり、毎日3食の食事が用意されています。高専祭や夏祭り、クリスマスイベントは、学生が自分たちで考えてつくります。「やってみる」経験が、学校のあちこちにあります。

そして今、あの学生のように「やってみたい」を本気で形にできる場として、私たちは「クリエーター人材育成プログラム」を立ち上げました。
ゲーム開発、VR、3Dデザイン、コンテンツ制作、UI/UX設計、半導体技術。少し難しそうに聞こえるかもしれません。でも、未来をつくるために必要な分野です。
ただ学ぶのではなく、自分のアイデアで挑戦できる環境を整えています。

私は、この釧路高専の60年の歴史を誇りに思っています。
それは建物や制度ではなく、ここから羽ばたいていった卒業生たちの姿があるからです。

だから私は、これまでも、そしてこれからも、挑戦する学生を応援し続けたいと思っています。
ヒーローは、生まれつき特別な人ではありません。
挑戦する人がいるかぎり、この物語は続きます。

【釧路高専へのアクセス】
■釧路空港から(バスで5分)
「釧路市内行」の連絡バスまたは「釧路駅行」の路線バス乗車、「高専前」下車
■JR釧路駅から(バスで30分)
くしろバス:「高専行」乗車、「高専前」下車、「白糠高校行」または「音別駅行」乗車、「大楽毛分岐」下車「新野団地行」乗車、「大楽毛分岐」下車
阿寒バス:「高専行」乗車、「高専前」下車、「阿寒湖温泉行」または「阿寒湖診療所行」乗車、「高専前」下車
■JR大楽毛駅から(徒歩で15分)