Qノーベル化学賞や物理学賞はスウェーデンで発表されたのに、なぜ、平和賞はノルウェーで発表されたのですか?(埼玉県、小4)
ノーベルの遺言だが理由は不明
A ダイナマイトを発明したスウェーデン人の化学者アルフレッド・ノーベル(1833~96年)は1895年11月27日、フランスのパリで遺言を書きました。そこには、自分の財産の一部を毎年、物理学、化学、医学・生理学、文学、平和の五つの分野で活躍した人たちに分けることが記されました。これがノーベル賞の始まりです。
遺言には選考委員も指定されました。物理学賞と化学賞は自然科学を研究する「スウェーデン王立科学アカデミー」、医学生理学賞は世界的な医科大学である「カロリンスカ研究所」、文学賞は約20人の詩人や言語学者、歴史家からなる「スウェーデン・アカデミー」、平和賞に関しては「ノルウェーの議会により選ばれる5人の委員」とされました。ノーベル賞には経済学賞もありますが、これはノーベルの死後の1968年にスウェーデン銀行の300周年を記念して創設されたものです。
遺言には、なぜ平和賞だけノルウェーの人たちが選ぶのか理由は書かれていません。スウェーデンのストックホルムにあるノーベル博物館の学芸員、ウルフ・ラーソンさんは、「ノーベルが遺言を書いた当時、スウェーデンとノルウェーは一つの国でした。両国に敬意を払い、ノルウェーの人たちも選考に加わるべきだと考えたのでしょう」と推測します。
ノルウェーは1814~1905年、スウェーデンに統治されていました。両国の人たちには対立の歴史があるものの、スカンディナビア半島に住む同じ民族として、世界や強い国を相手にするときは協力しあってきました。ノーベルは遺言の中で「(受賞者は)スカンディナビア人である必要はない」と記しています。「スカンディナビア」という国はありませんが、スウェーデンとノルウェーを一つの地域だと考えていたことを感じさせます。また、ノーベルは1890年代、ノルウェーが独立に向けて平和的な解決策を進めていることに気付き、スウェーデンよりも平和で民主的な姿勢だったため、平和賞にふさわしいと考えていたとされています。【毎日小学生新聞編集部】(毎日小学生新聞2017年10月30日掲載)

ノーベル平和賞を受賞した日本被団協の(右端から)箕牧智之さん、田中重光さん、田中熙巳さん=オスロで2024年12月10日、猪飼健史撮影
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